研究課題/領域番号 |
15K08373
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
元井 紀子 国立研究開発法人国立がん研究センター, 中央病院, 医長 (70292878)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肺癌 / バイオマーカー / 遺伝子変異 / 免疫染色 / ALK / PD-L1 |
研究実績の概要 |
本研究は、肺癌の病理学的特性と遺伝子異常との関連性を解明し、遺伝子異常を標的とした個別化医療への橋渡し研究を推進するものである。病理組織学的診断は現在最も普及した癌の診断方法だが、近年の技術革新に伴い次々と新規標的遺伝子異常が発見されるため、適切なコンパニオン病理診断(CD)が求められている。本研究では、不一致の原因として想定される腫瘍内不均一性=多様性(intratumoral heterogeneity)が病理検体を用いるCD結果に与える影響と機序を検討する。 今年度までの研究で、CDとして重要性の高いALK肺がんの多様性と関連する因子の解析、免疫チェックポイント阻害剤のバイオマーカーPD-L1免疫染色の評価に影響する因子の解析を解析した。また、多様性をもたらす機序として腺癌の形態変化との関連が示唆される遺伝子変異・タンパク発現の変化を研究している。 1 ALK肺癌の組織像の多彩を評価し、腺癌から多形癌成分を含む症例について組織像が異なる領域での免疫染色、FISH、mRNA遺伝子発現解析の相違を検索した。その結果、タンパク発現および染色体構造変化、ALK融合遺伝子型は領域による変化に乏しいが、mRNA発現で差がある遺伝子群があった。ドライバー遺伝子であるALK融合遺伝子は保存され、付加的遺伝子異常が表現型として形態像の変化と関連することを示した。 2 PD-L1発現は組織内分布に差があり、不均一で多様性があることが示された。また、PD-L1免疫染色に関して前処理、免疫染色実施、評価の各段階で結果が変動する要因を解析している。 3 組織亜型に類似性のある腺癌の中で、異なる遺伝子変異を持つサブグループを抽出し、臨床病理学的意義を検索している。 (付記:本稿では、バイオマーカー病理診断の意味でCDを用いている)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ順調に進んでいる
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今後の研究の推進方策 |
1 多形癌症例での解析を数を増やして検討を進める。 2 PD-L1免疫染色に関するバイオマーカー検索は標準化が必要な重要項目である。病理検体を取り扱う過程で影響する条件を検討する。 3 遺伝子変異型と形態表現型との関連性について、検証を進める。現在、臨床病理学的な予後との関連性、鑑別対象となる疾患での免疫染色解析を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の納品が年度末を過ぎるため、新年度購入手配としました。
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次年度使用額の使用計画 |
新年度会計で消耗品購入予定です。
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