研究課題
本研究は、肺癌の病理学的特性と遺伝子異常との関連性を解明し、遺伝子異常を標的とした個別化医療への橋渡し研究を推進するものである。病理組織学的診断は現在最も普及した癌の診断方法だが、近年の技術革新に伴い次々と新規標的遺伝子異常が発見されるため、適切なコンパニオン病理診断(CD)が求められている。本研究では、病理CD結果の不一致の原因として想定される腫瘍内不均一性=多様性(intratumoral heterogeneity)の影響とその機序を検討した。前年までの(1)ALK肺癌、(2)免疫チェックポイント阻害剤のバイオマーカーPD-L1 IHC、(3)肺癌の形態変化と遺伝子変異・タンパク発現の変化の研究に加え、今年度は(4)PD-L1 IHC評価に影響する因子として、固定時間、検体種、観察者の経験を検討、さらに(5)新たな分子標的としてMET ex14 skipping(MET14skp)変異陽性肺癌の臨床病理学的特徴とIHCによるCDの可能性について検索した。(4)PD-L1 IHCの結果には、固定液、固定時間、抗体クローン、染色条件が影響すること、体外診断薬とLDTの結果は異なる場合があることを明らかにした。PD-L1 IHCの標準化には、結果判定方法に加え、検体処理、染色過程を含めた適切な病理検査の精度管理の必要性が示された。また、セルブロック、細胞診検体では、検体作成過程の標準化、細胞診断の精度管理の重要性が示された。(5)MET14skp肺癌7例を収集し検討した。肺腺癌の1.2%と稀で、比較的多形癌が多く、淡明細胞の出現は特徴的だが、多彩であることを報告した。IHCでのc-METの発現は症例により異なり、形態所見との関連はあるが、発現が部分的で弱い症例もあることが判明した。pMETは全例陰性であった。本研究の条件では、IHCによるスクリーニングは困難であった。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 1件、 査読あり 10件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 8件)
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