研究課題/領域番号 |
15K08374
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中谷 行雄 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20137037)
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研究分担者 |
古屋 充子 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10361445)
矢澤 卓也 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50251054)
太田 聡 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (90324342)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | フォリキュリン / 肺癌 / 遺伝子変異 / バート・ホッグ・デュベ症候群 / 異型腺腫様過形成 / 微小結節性肺胞上皮過形成 |
研究実績の概要 |
H27年度は、肺に腫瘍性病変をきたしたBHD症候群確定例について検討した。7名の確定患者から採取された14箇所の腫瘍性肺病変を病理学的に検討したところ、5個の腺癌が見つかった。それらの組織型は上皮内腺癌(n=2)、微少浸潤腺癌(n=1)、乳頭状腺癌(n=1)、微小乳頭状腺癌(n=1)であった。また8個の異型腺腫様過形成(AAH)が見つかり、うち7つは一人の患者の肺に多発性に発症していた。残る1個は単発であるが微小結節性肺上皮過形成(MPH)様病変であった。これは気胸で採取された標本内に偶発性に含まれていた病変で、臨床歴から結節性硬化症の可能性は否定された。これらの病変がBHD症候群と関係があるか、腫瘍細胞をレーザーマイクロダイセクションしてDNAを抽出した。AAH以外の6病変でDNA抽出に成功し、FLCNと、散発性肺癌に高頻度に見られるEGFR, KRASについて検討した。6検体中5検体でFLCNに LOHが認められた。浸潤腺癌3検体にはいずれもEGFR 或いはKRAS変異も認められた。これまでBHD症候群における肺病変は嚢胞以外認識されていなかったが、今回、肺腫瘍発生とBHD症候群との関連を示唆する結果が得られた。一方で、浸潤癌部においては散発性肺癌に共通するドライバー遺伝子の変異を伴っていたことから、FLCN のLOHが高悪性度の癌に直結するかは不明である。今後は腎臓のみならず肺に関しても悪性を念頭に置いたフォローアップが必要かもしれず、症例をさらに集積して長期的に検討する必要がある。また、1例のみだがMPH様病変が得られたことは興味深い。BHD症候群と結節性硬化症は、ともにmTOR経路の制御因子に変異を来すことで肺や腎臓に病変を来す。今回、BHD症候群においてもMPH様病変を認めたことは、両疾患の相同性やmTOR阻害剤を用いた治療の可能性を検討する上で重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまで研究されていなかったBHD症候群の肺腫瘍発生について解析を進め、一定の成果を得た。現在、オンコサイト様変化を呈する病変の対象臓器や病変の種類の選定に時間を要している。今後、検索対象が決定されたら、腫瘍を中心にフォリキュリン異常の解析を進める必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
以前、オンコサイトーマ様変化を伴う甲状腺癌部をマイクロダイセクションしてFLCN のLOHを認めたことを報告したが、今回、1例の耳下腺腫瘍(病理診断はオンコサイトーマ)においても同様の検討を行いFLCN のLOHを認めた。これまで腎臓を含めてLOHパターンが得られやすい腫瘍はいずれもexon 11のホットスポットにおける1塩基挿入であった。これらの知見から、FLCN のLOHがオンコサイトーマの形態を示す腫瘍の形成に関与している可能性が出てきた。今後散発性のオンコサイトーマ(唾液腺腫瘍や腎臓腫瘍)におけるFLCNの性状やmTOR経路の制御について更なる検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗に若干の遅れがあるため
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次年度使用額の使用計画 |
肺以外の諸蔵器のオンコサイト関連腫瘍発生におけるフォリキュリン異常の解析を進める
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