研究課題/領域番号 |
15K08375
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
三浦 克敏 浜松医科大学, 医学部, 教授 (20173974)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超音波顕微鏡 / 老化 / 心臓弁 / 線維化 / 弾性 / 皮膚組織像 / 肝硬変 / 肺線維症 |
研究実績の概要 |
心臓大動脈弁について老人性変化をOpen accessの英文誌に発表した。(BioMed Research International 2016,http://dx.doi.org/10.1155/2016/6125204)また、同内容はヨーロッパ病理学会でもAortic stenosis and regurgitation of the elderly follow different processes of collagen ageingのタイトルで発表した。(Virchows Arch (2016) 469(suppl 1):S67-68)。加齢による大動脈弁閉鎖不全と狭窄はそれぞれ特徴的な音速画像を示し、異なる膠原線維の代謝を反映していた。 また、病理診断への超音波顕微鏡の応用というタイトルで "Microscopy and Analysis" book edited by Stefan G. Stanciu, ISBN 978-953-51-2579-2, 2016 のchapter15を担当執筆した。超音波顕微鏡の原理、細胞診や組織診断への可能性、化学修飾の計測等を述べた。 日本病理学会総会では春と秋にそれぞれ超音波顕微鏡による肝と肺の線維化像の特徴、超音波顕微鏡を用いた高齢者と若年者の皮膚組織像の違い、というタイトルで発表した。超音波顕微鏡をもちいて、肝臓や肺の線維化病変の評価、皮膚の加齢性変化について論じた。 また、6月に開催された第8回バイオ超音波研究会で’音速の標準サンプルと線維構造の描出法’について発表した。11月に浜松で開催された第3回 光超音波画像研究会では“核磁気共鳴エラストグラフィーと走査型超音波顕微鏡による髄膜腫弾性率の評価”というタイトルで共同演者として発表した。髄膜腫の組織評価について、MRIと超音波顕微鏡画像を比較した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大動脈弁、皮膚、肝、肺の病変について、加齢性または病変の進行にともなう変化を明らかにする当初の計画はほぼ順調に成果を得ている。超音波顕微鏡をもちいた組織の音速は組織の硬さに相関し、加齢にともなって一般に組織が硬くなる変化を数値で比較することができた。膠原線維、弾性線維の分布と密度、架橋反応などを、音速としてとらえることができた。 脳のアミロイド小体については超音波顕微鏡をもちいて描出をおこなったが、アミロイド小体の音速が周囲の脳実質と大差なく、描出ができなかった。音速像の変化がどんな化学的変化と関連するかを、蛋白消化や免疫染色の手法でさらに明らかにしている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
高齢者の石灰化を伴う心臓弁に沈着するアミロイドについて、抽出と電気泳動、質量分析の手法によって明らかにする予定である。新鮮な検体は共同研究者の協力でストックされている。石灰化が強く、タンパクの抽出は難しいが、各種の脱灰法で線維の抽出に成功した。今後は、主たる成分を分離し、質量分析法でペプチドの同定をおこなう予定である。また、ペプチドに対する特異抗体を用いる免疫染色により、アミロイドの局在と抗原分布との関連を明らかにしたい。 超音波顕微鏡をもちいて肝と肺の線維化の描出は可能であった。また、線維化の程度と音速は相関した。今後は治療や経過に伴う組織像の変化を音速で追跡できないかを、調べてみる予定である。抗ウイルス薬による肝線維化の軽減の程度の評価に応用したい。肺では線維化を来す各疾患による違いを調べてみたい。 超音波顕微鏡の組織像には計測誤差が生じる場合がある。音速の標準サンプルとして、濃度を変えたゼラチン膜、樹脂膜等の利用が見込まれる。安定なデータとなる標準サンプルの作成していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定した試薬の購入が当初予定よりも少額で済んだ。 追加の英文発表を準備したが、年度内に間に合わず、次年度に持ち越した。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度に当たり、学会発表と英語論文執筆のために、準備を進めている。 また抗体や分子生物用の試薬を準備する予定である。
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