研究課題/領域番号 |
15K08376
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研究機関 | 神戸常盤大学 |
研究代表者 |
新谷 路子 (田中路子) 神戸常盤大学, 保健科学部, 准教授 (40207147)
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研究分担者 |
鴨志田 伸吾 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (70351020)
伊藤 智雄 神戸大学, 医学部附属病院, 教授 (20301880)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 細胞死 / アポトーシス / オートファジー / ネクロプトーシス / 免疫組織化学 / 肺癌 / 細胞増殖 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、全身諸臓器の正常および腫瘍組織における細胞周期・細胞死関連蛋白の発現を網羅的に解析し、それらの発現パターンに基づく癌治療の個別化や予後予測に向けた基礎データを得ることである。 平成27年度は、肺癌、大腸癌、甲状腺癌を対象に免疫組織化学染色を行い、特に肺癌の組織型による細胞周期および細胞死(アポトーシス)関連蛋白発現に関して解析した。その結果、肺癌では組織型により細胞増殖・細胞死への誘導に差異が生じている可能性が示唆された。 平成28年度は、肺癌の組織型による細胞死経路の相違をさらに検討するため、microtubule-associated protein 1 light chain 3 (LC3) (オートファジーマーカー)、Mixed lineage kinase domain-like( MLKL:ネクロプトーシスマーカー)抗体による免疫組織化学染色を加えた解析を行った。LC3Bの陽性率は、腺癌2.3%、扁平上皮癌21.6%、小細胞癌44.5%で、組織型間で有意差が認められた(P < 0.001)。すなわち、LC3Bの陽性率は腺癌において低く、小細胞癌で高値を示した。MLKL陽性細胞はきわめて少なく、腺癌および小細胞癌ではほとんど見られなかった。しかし、扁平上皮癌では、約60%の症例において陽性細胞の小集塊が認められた。 肺癌を対象に、アポトーシス、オートファジー、ネクロプトーシス細胞死の誘導に関して免疫組織化学的解析を行ったところ、腺癌・扁平上皮癌・小細胞癌という組織型により細胞死誘導に差が生じている可能性が示唆された。今後、さらに関連蛋白の発現を解析し細胞死誘導の相互作用について明らかにする必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、オートファジーおよびネクロプトーシス経路の誘導について免疫組織学的に解析するため、最適な抗体の選定を行った。 ネクロプトーシスに関しては、陽性所見は得られたが肺癌での陽性細胞が少なかったため、種々の組織・症例を陽性コントロールとし、最適な染色条件を確立させた。 また、LC3B抗体は、特異的な陽性所見を得るため、各社からの市販抗体・数種類について条件設定を行った。繰り返し検討を行い、最適な抗体および染色条件を得た。
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今後の研究の推進方策 |
現在、胃癌に関しても解析が進行中であり、胃癌・肺癌・大腸癌・甲状腺癌について腫瘍部および隣接する正常組織における各種細胞増殖・細胞死関連蛋白の発現を解析していく。また、細胞死の関連性・相互作用を明らかにするため、さらに関連蛋白の発現を解析していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度(平成27年度)に自動封入装置を挿入したため、試薬・消耗品代を考慮し、前倒し請求を行いった。平成28年は、試薬・消耗品等を購入を計画的に購入した。最終年度(平成29年度)は、さらに試薬の購入、英文論文校正等の支出が見込まれるため、経費の次年度繰り越しを行った。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、細胞死関連蛋白に対する抗体、免疫組織化学検出用高感度キットなどの購入を行う。また、英文論文投稿に際し、英文校正を行う。
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