研究課題/領域番号 |
15K08380
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
松田 勝也 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (20380967)
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研究分担者 |
中島 正洋 長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 教授 (50284683)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 53BP1発現 / 尿路上皮腫瘍 / 蛍光免疫組織化学 |
研究実績の概要 |
本研究では低異型尿路上皮癌の診断精度向上に寄与する診断マーカーの開発を目的として研究実施計画に基づき研究を進めている。 組織学的に診断された組織標本を用いて,尿路上皮における53BP1発現解析を行った。研究に用いた組織標本は研究分担者と研究協力者の2名の病理専門医により選定された。正常尿路上皮、乳頭腫や過形成などの良性病変、低異型尿路上皮癌、高異型度尿路上皮癌を用いて免疫組織化学染色による53BP1発現解析を行っている。これまでの結果、正常尿路上皮に対して低異型度尿路上皮癌では53BP1核内フォーカス(nuclear foci:NF)の発現頻度が高く、 53BP1%NFが20%を超えるものを低異型尿路上皮癌と診断すると、その診断精度は感度100%、特異度79.9%であった。 低異型尿路上皮癌は形態学的には異型が軽度で診断に苦渋するが、53BP1NF解析は低異型尿路上皮癌の診断に有効と考えている。しかし、53BP1NF≧20%の中には少なからず乳頭腫が含まれていた。乳頭腫は良性腫瘍であり低異型尿路上皮癌との鑑別を要する。低異型尿路上皮癌は生物学的には自然に正常化することはない非可逆性の病変であり、DNA損傷応答機能は破綻していると考えられる。 一方、悪性に進展しない乳頭腫のような良性腫瘍ではDNA損傷応答機能は維持されていると推察される。そこで、低異型尿路上皮癌と乳頭腫におけるDNA損傷応答異常を評価するため、53BP1と増殖マーカーであるKi-67の蛍光二重染色によってDNA損傷応答異常の評価を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNA損傷応答分子53BP1の組織学的発現解析によって低異型度尿路上皮癌の発現パターンが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
これまで行った組織学的な53BP1発現解析について症例を増やして解析する。さらに、乳頭腫と低異型度尿路上皮癌の相違点を明らかにするため53BP1とKi-67の蛍光二重染色によってDNA損傷応答異常の評価を行う。 尿路上皮腫癌と組織診断された例と同一症例の細胞診標本(主にLBC標本)を用いて、53BP1発現解析を行う。 尿路上皮腫瘍における53BP1発現とゲノム不安定性の関連性を明らかにするため、尿路上皮腫瘍の組織切片からDNAを抽出しアレイCGHによる遺伝子コピー数異常の解析を行う。しかし尿路上皮腫瘍の組織切片面積は小さいため、aCGH解析に使用する十分なDNAが抽出できない可能性がある。その場合の代替法としてFISH法による遺伝子コピー数解析を行う。
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