研究実績の概要 |
大腸癌手術症例100例を用いて、claudin-1, 2, 4とclaudin-3, 7およびKi-67(MIB-1)の発現について免疫組織化学を行った。claudin-1, 4の膜での陽性率は58%と60%であった。claudin-3, 7は膜に陽性が58%と50%であり、核に陽性が22%と2%であった。 claudin-1, 4およびclaudin-3, 7の発現と臨床病理学的因子との相関では、claudin-1の発現低下はリンパ管侵襲の有るものに多く認めた(P<0.01)。また、claudin-1の発現低下は深達度の進行したものに多く認めた(P<0.01)。claudin-1, 4の発現と他の臨床病理学的因子との相関は認めなかった。claudin-3とclaudin-7の膜における発現と臨床病理学的因子との間には有意な相関は認めなかった。また、核における発現と臨床病理学的因子との相関では、claudin-7においては有意な相関は認めなかったが、claudin-3において粘液腺癌では有意に核での発現が上昇していた。 次に、大腸癌原発巣細胞株Caco2と大腸癌転移巣細胞株SW620細胞を用いてclaudin-1, 4およびclaudin-3,7のreal-time PCRとwestern blotによる発現解析を行った。その結果はclaudin-1, 4ともにSW620細胞株において発現の減弱がみられた。 大腸癌におけるclaudinの発現は腫瘍の分子生物学的変化による可能性があり、今回の結果から、claudin-1, 3の発現は組織型や予後を推定する上で重要な指標となると推察された。また、claudinの発癌に関与する役割や局在、メカニズムなどは十分には解明されていないが、claudin-1, 3は大腸癌の病理組織学的な指標となる可能性を示した。
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