研究実績の概要 |
従来から,尿中への糸球体上皮細胞(ポドサイト,Pod)や,ボウマン嚢上皮細胞(PEC)などの出現と各種糸球体腎炎との関連が報告されている.しかし,これら報告で用いられているPodやPECの検出方法は,特別な機材や試薬が必要であるため一般病院の日常検査として実施することは困難であった.そこで,申請者は一般病院でも実施可能な尿中Pod・PECの検出方法を考案した.具体的には,Liquid-based cytology(SurePath用手法)で尿細胞診標本を作製し,それに対してWT1抗体を用いた免疫細胞化学(酵素抗体法)を行うことで尿中のPodとPECの出現数を定量的に評価する方法である. 上記の方法を用いて検討した結果,各種糸球体腎炎の50%(33/66)にWT1陽性細胞(Pod・PEC)の出現を認めたが,下部尿路疾患(0/45)や健常者(0/30)にはWT1陽性細胞は出現していなかった(P<0.001)(Ohsaki H, et al. Cytopathology. 2016).また,半月体形成があれば,WT1陽性細胞は尿中で有意に多く(p<0.01),腎生検組織中で有意に少ないことが判明した(p<0.05).さらに,尿中 WT1陽性細胞数のカットオフ値を5個/10mL以上とした場合,中等度の正確性(AUC 0.735)をもって半月体形成を検出できることを明らかにした(Fujita T, Ohsaki H, et al. Cytopathology. 2017)(Ohsaki H, et al. Bio Protoc. 2018). 申請者の考案した方法は,各種糸球体腎炎や半月体形成を非侵襲的に検出できるため,糸球体腎炎の早期発見や予後予測などに有用であることが証明された.
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