研究課題
大腸癌は上皮腺管組織より発生し、多段階で遺伝子変異を蓄積する。最近では、癌腺管の周囲の間質組織の機能変化が重要な役割を果たすこともわかってきた。我々は癌間質においてDNAメチル化状態が変化する遺伝子を探索するため、3症例の大腸癌を対象に、腺管分離法を用いて腺管組織と間質組織の分離・回収を試みた。特に癌組織における腺管と間質は、実体顕微鏡で観察される形態のみでは分離が困難であったため、癌腺管の有するTP53遺伝子変異を指標に分離を確認した。2症例を対象に、Infinium Methylation EPICを用いた網羅解析を実施し、正常腺管、正常間質、癌腺管、および癌間質における合計854,251箇所のCpG部位のDNAメチル化プロファイル(β値)を得た。各組織の間でβ値の平均値および標準偏差には顕著な差は認められなかった。同じ組織どうしを2症例の間で比較すると、β値の差が大きいCpG部位数は癌腺管で多く、DNAメチル化状態の差が大きかった。同じ症例について4種の組織間で比較すると、癌間質と癌腺管、癌腺管と正常腺管および正常間質と正常腺管の間で、β値の差が大きい部位数が多く、DNAメチル化状態の差が大きかった。一方、癌間質と正常間質の間では、DNAメチル化状態の差は相対的に小さかった。だが、一部のCpG部位で観察されたDNAメチル化レベルの差は、間質組織において重要なはたらきをする遺伝子の存在を推測することができる。これらの遺伝子を対象に発現および機能解析をすることで、癌間質の役割が明らかになる可能性がある。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件)
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