研究実績の概要 |
PanIN病変とIPMNについては,我々のこれまでの研究で組織学的な共通点がみられることを経験している.現時点ではPanINは通常型膵管癌の前駆病変として定義された概念で,IPMNとは異なる名称を与え,1 cmという大きさで鑑別している.特にgastric type IPMNとPanINは形態学的に鑑別困難で,我々の研究でも粘液形質はほぼ同一でIPMNの中にはPanINを経過して発生するものが少なからず存在する可能性を考えている. この事を証明するためこれまで検討し,集積してきた膵癌症例とIPMN症例において,PanIN病変とIPMNとPanINの境界病変である5 mmから1 cm大の病変,IPMNについてPanINの異型度分類を用いてgradingを行ない,PanIN,IPMNと,IPMNとPanINの境界病変のそれぞれについて代表的な部位を同定し,組織ティッシュアレイ用の組織を作製し,それぞれの組織に関して,粘液形質など(MUC1, MUC2, MUC3, MUC4, MUC5AC, MUC6, CDX-2, CD10)により,胃型,腸型などの形質を同定した. さらに血管壁のマーカー(CD31),細胞増殖マーカー(MCM7,Ki-67,TopoⅡα,EGFR,aurora-A,PKCなど),EMT関連のマーカー(TGFβなど),血管新生マーカー(VEGF-A,VEGF-C,VEGFR,PIGFなど), 接着マーカー(E-cadherin,N-cadherin,β-catenin)などや,膵癌で指標となっているKRAS2,TP/p53,CDKN2A/p16,COX-2,SMAD4/DPC4などを中心に免疫染色を行った. 現在免疫染色を行った標本について,バーチャルスライドを用いて陽性染色面積,染色強度などをデジタルデータ化し,粘液形質などとの関連を客観化しているところである.
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