研究課題/領域番号 |
15K08387
|
研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
山崎 一人 帝京大学, 医学部, 准教授 (60302519)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 膀胱 / 尿路上皮癌 / FGFR3 / hTERT / 遺伝子変異 / in situ PCR |
研究実績の概要 |
平成28年度は前年度に引き続き,尿路上皮癌TURBT検体より抽出した腫瘍DNAを用いて,Sanger法にてFGFR3遺伝子点突然変異例(R248C, S249C, G372C, S373C, Y375C),および,hTERT遺伝子点突然変異例(-124C>T, -146C>T)を抽出した.変異陽性例,陰性例より抽出した腫瘍RNAを用いてRT-PCRを実施し,各変異部位に特異的に相補するプライマーを用いて変異部位の増幅を試みた.各変異部位に特異的に相補するプライマーを用いてin situ LAMP 法による変異細胞の可視化を試みた.チューブ内での反応においては,各変異領域の増幅が得られたが,スライドグラス上での可視化に関してはバックグラウンドが強く,良好なシグナルが得られなかった.原因としては第1に標式オリゴの非特異的な結合が除去できていないことにあるものと考えられ,現在可視化のための条件設定を検討中である. 以上の課題を補う目的で,検討項目を1つ追加した.2015年に発表されたStar-FISH(Nature Genetics. 47;1212-1219:2015)は対立遺伝子特異的PCR,FISHを可能とする手法で、細胞膜が完全な形で保持された腫瘍組織の単細胞を対象に、一塩基変異とコピー数変化を同時に検出することが可能となり,その有用性が注目されている.原法はHER2増幅陽性乳癌におけるPIK3CA遺伝子変異を同定するために構築されたものであるが,我々はこの手法を応用して膀胱尿路上皮癌におけるアッセイを構築して検証したところ,良好な変異特異的遺伝子の増幅が確認された.現在,in situ LAMP法と並行して,Star-FISH法を用いてスライドグラス上で変異遺伝子を同定するアッセイの確立を検討中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
FGFR3遺伝子点突然変異例,hTERT遺伝子点突然変異例,および,これらの領域における遺伝子変異陰性例より抽出した腫瘍RNAを用いてRT-PCRを実施し,各変異部位に特異的に相補するプライマーを用いて変異部位の増幅を試みた.また,これらの症例のパラフィン包埋組織切片,および,尿細胞診検体を用いて,スライドグラス上でRT-PCRを実施し,各変異部位に特異的に相補するプライマーを用いてin situ LAMP 法による変異細胞の可視化を試みた.腫瘍RNAを用いたチューブ内での反応においては,各変異領域の増幅が得られたが,スライドグラス上での可視化に関してはバックグラウンドが強く,良好なシグナルが得られなかった.原因としては第1に標式オリゴの非特異的な結合が除去できていないことにあるものと考えられ,現在可視化のための条件設定を検討中である. 以上の課題を補う目的で,平成28年度においては検討項目を1つ追加した.上述のStar-FISHは変異部位に特異的なin situ PCRを行いて変異遺伝子を可視化する手法であり,その有用性が注目されている.この手法を尿路上皮癌に応用すべく改良したアッセイを構築して腫瘍より抽出したDNAを増幅したところ,良好な変異特異的遺伝子の増幅が確認された.現在,in situ LAMP法と並行して,Star-FISH法を用いてスライドグラス上で変異遺伝子を同定するアッセイの確立を検討中であるが,本手法はこれまでのin situ LAMP法と同等以上の検出能力を有するものと考えている.検討項目の追加のため,進捗がやや遅れているが,その内容については,平成29年4月29日に開催される日本病理学会総会で発表を予定しており,その後この内容での論文発表も予定している.
|
今後の研究の推進方策 |
膀胱尿路上皮癌に特異的な遺伝子変異の可視化という,一つのテーマに沿って一通りの研究成果を得ている.但し,臨床材料を用いたアッセイの確立には,非特異的な反応を極力抑えて特異度を上げる必要がある.現在,Star-FISH法とin situ LAMP法を並行して用い,スライドグラス上で変異遺伝子を同定するアッセイの確立を検討中であるが,予備実験の経過からは,Star-FISH法はこれまでのin situ LAMP法と同等以上の検出能力を有するものと期待される.ただし,FGFR3,hTERT遺伝子の変異hot spotの塩基配列はいずれもGC richであることから,PCRに関しては条件の設定が通常のものよりも厳しくなることが予想される.PCR条件が平易なものではないことを考慮して,より特異的で感度の高いシグナルを得るために,今後はLNA (locked nucleic acid)を用いたhybridization probeを用いて,標的遺伝子部位のGC含有率にかかわらず再現性の高いアッセイの確立を目指したい.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度予算のうち,平成29年2,3月に購入した物品の支払いがまだ完了しておらず,次年度に支払いを持ち越しした.また,先に述べたように,可視化の際のバックグラウンドの除去方法を検索するのに時間を要したため,症例数の処理がやや遅れたこともあって残額が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
研究計画に則して課題の遂行を行う.また,研究課題の発表に関連した旅費,および,英文論文に関連した校正料,投稿料を予定している.
|