研究課題/領域番号 |
15K08388
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
近藤 福雄 帝京大学, 医学部, 教授 (80186858)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 肝細胞腺腫 / 免疫組織化学 / 遺伝子変異 / 造影剤トランスポーター / 背景因子 |
研究実績の概要 |
平成27年度目標の1)集積された良性肝細胞性結節を免疫組織化学的に診断し、亜分類する。これを欧米のデータと比較する。ということが達成でき,論文刊行した。すなわち 34例の肝細胞腺腫例を免疫組織化学的にHNF1αinactivated type(H-HCA)(29%), Inflammatory HCA(I-HCA)(29%)、β-catenin activated HCA(b-HCA)(21%)、unclassified HCA (u-HCA)(9%)の基本4亜型と2つの特殊型b-HCA/H HCA(6%),b-HCA/I HCA(6%)である。これは欧米のデータとほぼ同様であった。2) 臨床的データもあわせて、これを欧米のデータと比較する。ということも達成,論文化した。本邦では危険因子の経口避妊薬は頻度が少なく,その頻度の高い欧米と著明な差異があった。3)造影剤トランスポーターの発現と画像所見につき、各亜型で比較する。ということも達成し,原著論文と症例報告を刊行した。すなわち,EOB-MRI画像での造影剤トランスポーターであるOATP1B3表現は、b-HCAでよく発現され,他の3亜型では減弱していることを発見した。画像所見にても確認した。4)生検組織診断にて肝細胞腺腫確定診断例につき、患者同意と倫理委員会承認のもと、無治療経過観察症例を集積する。という集積が達成された。現在20例以上の無治療観察例があり,今後さらに増加予定である。 以上,当初の目標は十分に達成されている。その後症例も増え集積症例は肝細胞腺腫40例59結節,その比較対対照病変の限局性結節性過形成例は52例84結節であり,国内最多水準と考えられる。肝細胞腺腫,限局性結節性過形成の定型例の他,さらに,その併存例や悪性転化例も集積されている。 現在,これらの遺伝子変異を検索する準備も整い,近日スタート予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示した通り,平成27年度目標はすべて達成されている。 さらに,症例の集積や遺伝子変異解析の準備も順調である,集積症例のなかには,肝細胞腺腫が限局性結節性過形成内に出現した特殊例はも含まれており,今後の遺伝子解析の対象として大いに期待できる症例である。 様々な画像診断医との連携も良好であり,臨床的,画像診断的成果も期待される。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画である平成28年度目標をそのまま遂行する。 1)免疫組織化学的に異常のあった例につき、遺伝子変異をさらに検討する。特に、日本特有の亜型があるかにつき、詳細に検討する。 2)上記のデータを血流異常に起因する非腫瘍性病変、限局性結節性過形成(FNH)のデータと比較する。 さらにそれに加えて,限局性結節性過形成→肝細胞腺腫→肝細胞癌と3段階的進展を示唆する例,限局性結節性過形成→肝細胞腺腫,あるいは肝細胞腺腫→肝細胞癌と2段階進展を示唆する例も遺伝子解析する。 肝細胞腺腫の背景因子として欧米と異なった因子=肝内血流異常の関連が示唆される症例が多数集積されているので,これらの臨床的,病理学的解析を行う。すなわち,臨床像,画像,病理組織所見,遺伝子変異等である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本科研費取得前に購入済であった試薬類が十分在庫があり,平成27年度の研究を遂行するのに有用であったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は,試薬使用量が平成27年度よりも増加することが見込まれるため,当初の予定通りの平成28年度予算に加え,試薬使用量の増加をこの次年度使用額で補う予定である。
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