研究課題
骨軟部腫瘍ではreverse transcription-polymerase chain reaction (RT-PCR) 法やfluorescence in situ hybridization (FISH) 法を代表とする分子遺伝学的手法を用いた腫瘍特異的融合遺伝子の検出が補助診断法として応用されていますが、本研究ではそれらに代わる新たな手法として次世代シークエンス (NGS) が有用か否かを検討しました。NGSの受託解析で実績のある民間業者の解析機器を利用し、日常の病理診断に用いられるホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍組織 (FFPE) から抽出したRNAを解析したところ、約7割のサンプルで質的に解析可能との結果が得られたことより、既に融合遺伝子が検出されている滑膜肉腫や粘液型脂肪肉腫などのFFPEから抽出したRNAを用いてNGSを行うも、目的とする融合遺伝子は検出されませんでした。FFPEの固定や保存過程で遺伝子が断片化されていたことが主たる原因と推察され、腫瘍組織の固定方法や時間等の条件の最適化が必要と考えられました。このため、解析サンプルをFFPEから凍結新鮮腫瘍組織に変更し、未知の融合遺伝子が存在する可能性のある骨軟部腫瘍10例をNGSで解析したところ2例において、腫瘍の臨床病理学的特徴からは当初想定しなかった腫瘍特異的融合遺伝子 (PAX3-MAML3、BCOR-CCNB3各1例) が検出されました。したがってそれらに類似した臨床病理学的特徴を有する症例を収集して検討したところ、これらの融合遺伝子の検出と共に新たな臨床病理学的特徴を見出すことができました。その他に新たな融合遺伝子の候補が23種類得られましたが、臨床病理学的に類似した所見を有する他の例を検索したにも関わらず、同じタイプの融合遺伝子が検出できた例は目下なく、今後のさらなる検索が必要な状況です。
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