胃消化管間質腫瘍(Gastrointestinal stromal tumor : GIST)を非コードRNA発現の観点から、発生臓器間で、および、低悪性度と高悪性度GIST間で比較することによって、その発生・由来および生物学的性質に迫ることを目的とする研究である。今年度は継続した2つの課題に加えて、新たに1つの課題について研究を進めた。 1.GISTのc-kit遺伝子、PDGFRα遺伝子、およびその他の遺伝子変異の解析:発生臓器(胃、小腸、直腸、消化管外)、低悪性度と高悪性度、若年発生、などの症例を追加し、検討した。c-kit遺伝子およびPDGFRα遺伝子が野生型の症例については、BRAF、TP53、KRAS、NRASの遺伝子変異についても検索した。既知の遺伝子変異がない症例については免疫組織化学的にSDHBの発現について検索した。その結果、消化管外および若年発生のGISTには亜型とするべき群が含まれていることを確認した。 2.microRNA発現の網羅的解析:前年度までの検討からホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)検体が解析材料として有用であることが確認されているので、主にFFPE検体を用いて網羅解析を継続した。症例数が増え、発生臓器間の比較が可能になったが、発生臓器間の有意差はなかった。ただし、クラスター分析では、発生臓器の違いで3つのグループに分けられる傾向があった。低悪性度群および高悪性度群の比較では、発現に差のあるmicroRNAが同定され、これらは細胞増殖や転移能に関係したものであった。 3.長鎖非コードRNAの発現の解析 数種類の長鎖非コードRNAについて発現を比較した。発生臓器間あるいは悪性度による違いは見いだせなかった。また、主要ながん関連経路に関係する遺伝子の発現を網羅的に検索し、microRNAや長鎖非コードRNAの発現との関係を検討した。
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