研究課題/領域番号 |
15K08392
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福重 真一 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90192723)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 癌 / ゲノム / 遺伝子 / 発現制御 / 脱メチル化 / 転写活性化 / 前立腺癌 / 細胞増殖 |
研究実績の概要 |
DNAメチル化は、癌関連遺伝子発現を抑制し、高い増殖能力、不死化、浸潤、転移など癌の特徴に影響を及ぼすため、癌の診断、治療標的として重要である。しかし、一般に、癌細胞には多数のメチル化異常が見られ、どれが癌の特徴に関連するのか見出すことは難しい。我々は、メチルCpG結合ドメイン(MBD)とTET1蛋白(Ten-eleven translocation protein 1)の触媒ドメイン(TET1-CD)の融合蛋白を用いたゲノムワイドなDNA脱メチル化誘導技術を開発し、前立腺癌細胞株LNCaPに応用したところ、細胞増殖が著しく抑制されることを見出した。本研究では、この系を用い、前立腺癌細胞の増殖に関与するメチル化遺伝子を探し出し、DNAメチル化による細胞増殖促進メカニズムや診断バイオマーカー、治療標的としての可能性について明らかにすることを目的とした。まず、前立腺癌細胞株としてLNCaP以外にDU145、PC-3の2細胞株を、また、正常対象として、正常前立腺細胞株RWPE-1を用い、それぞれの細胞株に、Tetリプレッサー(TetR)発現コンストラクトを導入した細胞株を作製した。次に、野生型(wt)と変異型(mut)のTET1-CDを用い、MBD-TET1-CDwt、MBD-TET1-CDmutをTetオペレーター(TetO2)下流に挿入したDNAコンストラクトを作製した。現在、TetRを発現する3種類の前立腺癌細胞と1種類の正常前立腺細胞を用い、MBD-TET1-CDwtあるいは、MBD-TET1-CDmut蛋白を発現誘導する細胞株を作製している。また、これら4種類の細胞株にNFkB(AD)-MBDを導入した細胞株の作製も進めている。NFkB(AD)-MBDの発現もメチル化遺伝子の活性化を引き起こすことがわかっており、方法の違いによる細胞増殖抑制活性を調べていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
テトラサイクリンによる遺伝子誘導系で、Tetリプレッサー細胞株の作製に少し時間がかかったため。
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今後の研究の推進方策 |
テトラサイクリン投与によるMBD-TET1-CDwt、MBD-TET1-CDmut、NFkB(AD)-MBD遺伝子の発現誘導に必須のTetリプレッサー発現細胞の作製に少し時間がかかったが、その後は順調に研究計画が進められている。3種類の前立腺癌細胞と1種類の正常前立腺細胞からMBD-TET1-CDwt、MBD-TET1-CDmut、NFkB(AD)-MBD誘導発現細胞を作製し、細胞増殖アッセイによりゲノムワイドなメチル化遺伝子の再活性化が細胞増殖にどのような影響を与えるのか解析していく。また、遺伝子発現マイクロアレイにより関与するメチル化遺伝子を絞り込む作業に進んで行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品購入に際し、キャンペーンにより若干の余剰が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞培養等で使用する消耗品に使用する予定である。
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