研究課題
悪性腫瘍の中には高悪性度、予後不良といわれる型のものがある。例えば乳癌 ではTriple negative(TN)型(ER陰性、PgR陰性、HER2陰性)の浸潤癌は、ホルモン治療やハーセプチン治療が無効で、neoadjuvantやadjuvant化学療法の有効性も低いため、非常に予後が悪いことが知られている。このような腫瘍に高発現する分子の一つとしてMCM2(minochromosome maintenance protein 2)に注目した。これまでの研究でMCM2高発現腫瘍細胞にウイルス由来のgp70蛋白を導入すると、DNA損傷誘発アポトーシスが著明に増強することが分かってきた。そこで本研究では、まずMCM2発現の高い悪性腫瘍細胞株を用いたin vitroの実験系でこの現象を再現し、新たなアポトーシス誘導経路に関わるMCM2の作用を明らかにするとともに、それを応用した治療モデルの作製を目的として実験を行う。具体的にはリコンビナント蛋白としてgp70を細胞内に導入する手段を開発し、白血病細胞および固型腫瘍細胞において、MCM2を用いたアポトーシス誘導実験系を構築する。今年度は乳癌および卵巣癌の固形腫瘍cell lineを用いてin vitroでの確認を行い、その有効性を検証した。白血病細胞については、Friend leukemia virus(FLV)を感染させることによってgp70の導入に成功しているが(PLoS ONE 2012)、ウイルスの感染しない固型腫瘍由来の細胞についてもgp70を細胞内に導入するために細胞内導入ペプチドとgp70をタンデムに繋いだ蛋白を用いた手法を開発し、非常に良好な結果が得られている。
2: おおむね順調に進展している
計画中の細胞株を用いた実験について概ね目標としていた成果を得ることができた。
今後は、主にin vivoでのMCM2を標的としたアポトーシス増強作用効果について検討し、結果の解析を行う予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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