研究課題
PDGFR-α KO マウスとコントロールマウスにおいて、生後1日目と生後8週目の成体期の2点より神経幹細胞を分離し、各種分化マーカーを用いて、分化能と遊走能を比較検討した。培養した神経幹細胞に4OH-タモキシフェンを加えてKOを誘導した場合は、生後1日目および生後8週目のいずれもPDGFR-α KOにより、遊走能が著明に低下し、オリゴデンドロサイトおよび神経細胞への分化能も著明に抑制され、アストロサイトへの分化は亢進した。ところが、生後8週目のマウスにタモキシフェンを予め投与し、PDGFR-α KOを誘導した状態で、神経幹細胞を分離すると上記の変化は認められなかった。in vivoで脳の状態を染色等で観察すると、KOをエスケープしたオリゴデンドロサイト前駆細胞の旺盛な増殖が誘導されたことが確認された。これらのタモキシフェンによるKO抵抗性前駆細胞は、培養細胞に分離しても4OH-タモキシフェンによるKO抵抗性が認められた。生後1日目mouseより分離したPDGFR-α KO 神経幹細胞、およびコントロール神経幹細胞にてmRNAマイクロアレイ解析、pathway analysisを行い、axonal guidance signalingを中心とした遺伝子群の発現がPDGFR-α KOにより有意に低下することが確認された。細胞極性を制御するといわれる一次繊毛にPDGFR-αが発現することに関連する結果であった。
2: おおむね順調に進展している
平成27年度の研究計画のうち、下記を実施した。PDGFR-α KO マウスとコントロールマウスにおいて、生後1日目と生後8週目の成体期の2点より神経幹細胞を分離し、各種分化マーカーを用いて、分化能と遊走能を比較検討した。平成28年度計画のうち、下記を既に実施した。PDGFR-α KO 神経幹細胞、およびコントロール神経幹細胞にてmRNAマイクロアレイ解析を行い、PDGFR-α欠損による形質変化に関与すると考えられる遺伝子群を同定し、pathway analysisを行った。
PDGFR-α KO細胞を可視化するマウス(Rosa26 mCherry+/-; ER-TM-Cre PDGFR-α flox/flox)を用い、生後のSVZとSGZと、新しい神経幹細胞の動員箇所として認識されつつある髄膜周囲や脳実質血管周囲の組織において、mCherry 陽性すなわちPDGFR-α KO細胞の分布を確認し、KO効率と特異性を検討する。SVZのB-cell/C-cell/A-cell、SGZのtype-1 cell/type-2a cell/type-2b/type-3cellの比率とその動態を、各種の増殖、分化マーカーとの多重染色にてmCherry陽性PDGFR-α KO細胞を追跡し、比較検討する。Primary ciliumのマーカーであるSmo, adenyl cyclase III、acetylated tubulin、basal bodyのマーカーであるγ-tubulinなどにてPrimary ciliumの形態変化と細胞極性の変化を光顕的に調べる。
主として消耗品の物品購入に際して、端数として574円の残額が生じた。
次年度の物消耗品購入比に充当する。
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