研究課題/領域番号 |
15K08398
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
岡崎 泰昌 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30403489)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 鉄代謝 / 細胞増殖 / DMT1 Associated Protein |
研究実績の概要 |
鉄は細胞機能の維持に必須な酵素反応を触媒する遷移金属であり、Divalent Metal Transporter 1 (DMT1) を含む小胞によるエンドサイトーシス機構により細胞内に取込まれる。DMT1を含む小胞が細胞質を移動する輸送機構には未解明な点が多く、ラット十二指腸cDNAライブラリを用いたyeast-two-hybrid system により、DMT1 Associated Protein (DAP)を同定した。DAPはエンドサイトーシスと関連するだけではなく、細胞増殖を調節する分子であった。腫瘍のパラフィン包埋組織でのDAPの発現検討は報告されていないため、申請者は、市販されているTissue MicroArray(TMA) 標本の免疫染色を施行した。TMA標本の追加免疫染色により、多くの腫瘍組織でDAPは発現していることを確認した。tumor heterogeneity による発現パターンの変化があることが否定できないため、今後は、倫理委員会での研究計画の承認後に、外科病理材料を用いてDAP免疫染色を行い、腫瘍組織での発現パターンの詳細な検討を行う予定である。 DAPをknock out するゲノム編集用プラスミドやゴルジ装置や形質膜を可視化するプラスミドを購入し、培養細胞を用いた実験を行う準備を行った。また、DAPはPeripheral-type benzodiazepine receptor(PBR)と結合するモチーフ配列が見られるため、PBR抗体を購入しマウス胎児組織や中皮腫組織を用いて免疫染色を行った。PBRとDAPの局在パターンについて検討を行い、腫瘍組織における発現レベルの検討を行う準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年10月に追加内定を受け、研究課題に取組みを始めた。市販のヒト Tissue-MicroArray(TMA)スライドの追加購入と免疫染色を行った。TMAでは多症例の検討が同時に出来るが、腫瘍組織での発現にばらつき(tumorheterogeneity)が存在する場合には、鑑別診断のマーカーとしての有用性は制限される。生検組織のような小検体ではTMAコアよりは小さいためTMA標本でも十分と考えられるが、tumorheterogeneityの有無の検討のため、切除材料を用いた検討を行う。また、市販TMA標本は腫瘍の組織型によっては、臨床病期別に作成されたTMA標本もあり、臨床病期との相関についても検討を行う。 申請者は、アメリカ留学時にDAP分子の研究を開始した。DAP分子はPeripheral-type benzodiazepine receptor(PBR)と結合することが想定されている分子である。PBRはBenzodiazepine 以外にもProtoporphyrin IX (PP IX) と結合することが知られている。PP IXは二価鉄と錯体を形成してヘム合成の基質となり、鉄代謝と関連する。申請者はアメリカ留学時にDAP分子とPP IXについて研究を行い、筆頭著者として論文投稿の原稿を作成しており、この研究成果を踏まえたDAP分子の機能解析の展開まで、進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
①名古屋大学生命倫理審査委員会の承認の元に、病院病理部からパラフィン包埋ブロックの借用を行い、ヒト腫瘍組織でのDAP分子の発現を検討する。 ②培養細胞を用いて、三種類のDAP construct(NLS-EGFP, GOLD-EGFP, full lenght DAP-EGFP) を遺伝子導入し、生細胞での局在を観察する。平成27年度に行う予定であったが、後期からの科研費の採択であったこともあり、平成28年度に施行する。 ③培養細胞を用いたDAPのシグナル伝達機構の解析:予備実験で、shRNA plasmid vector を遺伝子導入することによりDAPのknock down を行うと、細胞増殖やATP量の低下を認めた。シグナル伝達機構の解析を平成28年度から開始する。 ④PBRの発現検討:PBRはDAPと相互作用を示すことが想定されている分子であり、主にミトコンドリアに局在する。乳癌では発現が上昇することが報告されているが、他のがんでは報告は少ない。そのため、腫瘍細胞の発現レベルを検討し、良悪の鑑別マーカーや予後予測マーカーとしての有用性を検討する。 ⑤DMT1は、Natural-resisicante associated macrophage protein 2 (Nramp2) とも報告されている分子であり、貪食とも関連がある。自然免疫とDAPの関連についても研究を進めていく予定である。
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