研究課題
DMT1 Associated Protein (DAP)は、DMT1 のC末端と相互作用を示すだけではなく、Peripheral-type benzodiazepine receptor (PBR)とも相互作用を示すことが想定され、PBR-Associated Protein 7 (PAP7)とも呼ばれている。PBR は、ヘムの前駆体であるprotoporphyrin IX (PP IX)の輸送に関連していることが想定されている。そのため、赤芽球系細胞におけるヘム合成のモデル細胞株として汎用されているK562(赤白血病細胞株)を用いて研究を行った。PP IXをDMSOに溶解してK562を処理すると、濃度依存性に細胞内PP IX とヘム濃度の増加が見られた。この濃度増加は三層性であり、1時間で急激に増加し(一層目)、12時間後までは平衡状態であり(二層目)、24時間後には再増加が見られた(三層目)。PP IX処置によりDAPの発現が1時間後から低下し、24時間後には蛋白量の回復が見られた。PP IX投与により、DAP mRNA が12時間後には増加し、蛋白量の減少を回復するためにmRNAを誘導して蛋白量の回復を行っていると考えられた。DAPと異なりDMT1のmRNAは低下したままであり、異なる発現調節機構の存在が示唆された。造血細胞ではC/EBPalpha (C/EBPa)は顆粒球分化に伴って発現亢進し、赤芽球分化に伴って発現低下を示すことが知られている。PP IX処置による赤芽球分化誘導作用に伴い、K562細胞ではC/EBPaの発現は低下していた。C/EBPaはDMT1の転写亢進因子であり、C/EBPaの減少がDMT1mRNAの発現低下と関連することが考えられた。DAPとDMT1は蛋白レベルでは相互作用を示すが、mRNAの発現調節機構は異なることを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
DAP とPP IX の関連について、学術論文として発表を行うことができた。DAP の細胞内分子機構を明らかにするため、作成してあるsh vector を用いてシグナル伝達経路の解析を行う予定である。赤白血病細胞株を用いて研究を起こったが、遺伝子導入が容易な子宮頸がん細胞株(HeLa)、胎児腎臓細胞株(HEK293T)、不死化中皮細胞(MeT5A)、悪性中皮腫細胞株を用いて、knock down の実験を行う予定である。
細胞内機能を解析するために作成した sh vector のみではなく、翻訳後リン酸化についても、検討を行う。また、DMT1分子のエンドサイトーシスと小胞輸送に関連する可能性も考えられるため、小胞輸送との関連についても検討を行う。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 2件)
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