研究課題
Divalent metal transporter 1(DMT1)は二価金属の輸送に関わる分子であり、細胞の鉄代謝に重要な役割を果たす。申請者たちは、DMT1のC末端と相互作用を示すDMT1 Associated Proten(DAP)を同定した。DAPはperipheral-type benzodiazepine receptor(PBR)との相互作用が推定され、PBRはヘムの前駆体であるprotoporphyrin IX(PPIX)をミトコンドリア内に輸送するため、PBRを介してPPIXとDAPの相互作用が推定される。赤芽球モデル細胞株として汎用されいるK562を用いてPPIXとDAPの相互作用を検討した。PPIX処理により、DAP蛋白は減少し、何らかの相互作用の存在が示唆された。PPIXは細胞内鉄プール(Labile iron pool; LIP)から鉄の供給を受けてヘムとなり、フェリチン蛋白は分解される。PPIXにより誘発されるフェリチン蛋白の分解は、クロロキンとラクタシスチンの組合せが有効に分解を抑制できたが、DAP分子の分解阻害は明瞭ではなくDAP分子の分解機構の解析は今後の検討課題である。また、食事中の非ヘム鉄は十二指腸からDMT1を介して吸収され、十二指腸吸収上皮様の分化を示すCaco-2が実験モデルとして用いられている。この実験モデルを用い、ヘム鉄投与によりDMT1が管腔側から細胞質へ内在化されることを明らかにした。非ヘム鉄の投与では数十分でDMT1の内在化が誘導されるが、ヘム鉄ではDMT1の内在化は二時間後に観察された。ヘム鉄投与二時間後にはLIPは増加していた。ヘム鉄がヘムオキシゲナーゼにより分解されてLIPの鉄量を増加させ、適切な細胞内コンパートメントに鉄を配るためにDMT1の内在化が誘導されたと考えるが、分子機構の解析は今後の検討課題である。
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