研究実績の概要 |
1) Girdinチロシンリン酸化部位の変異マウスの作製と解析 Girdinのチロシンリン酸化の役割を個体レベルで解析する目的で、チロシンリン酸化部位Y1764とY1798の両者をフェニルアラニンに置換した変異マウス(GirdinY1764,1798F)の作製を試み、変異マウスの樹立に成功した。Girdinノックアウトマウスのホモは、生後1~3週間のうちに生育不良となり、離乳前には全匹が死亡するのであるが、GirdinY1764,1798F変異マウスのホモは外見上、正常に発育し、半年前に生まれたホモが現在まで生き続けている。従って、GirdinY1764,1798F変異マウスの表現型はノックアウトマウスよりマイルドと考えられる。Girdinノックアウトマウスには、脳室下帯で新生された神経前駆細胞の嗅球への移動が障害され、移動経路であるRMSが拡張するという異常が生じるが、GirdinY1764,1798F変異マウスのRMSは正常の構造が保たれていた。従って、神経前駆細胞の移動にはGirdin Y1764およびY1798のリン酸化は必須でないと考えられる。
2) GirdinのGEF活性を喪失する変異マウスの作製と解析 GirdinはC末端部にGEF活性をもつドメインを有しており、F1696Aの変異によりGEF活性は喪失する。他の研究グループの解析から、GEF活性とチロシンリン酸化によるシグナル制御は密接な関わりがあることが分かっている。今回、GEF活性喪失変異であるGirdin F1696A変異マウスを作製し、解析を行った。Girdin F1696A変異マウスのホモはGirdinノックアウトマウスと同様、生後1~3週間のうちに生育不良となり、離乳前には全匹が死亡した。また、RMSは拡張しており、神経前駆細胞の移動障害が起こっていると考えられた。
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