研究実績の概要 |
培養した樹状細胞(DC)またはマクロファージを用いて、HGFによる免疫抑制機構について解析した。免疫寛容の誘導と関わりの深い2つのオキシダーゼならびに炎症抑制性サイトカインについてHGFおよびHGF断片分子Xの効果を解析した。 その結果、親分子であるHGFはDCやマクロファージに対して、ヘムオキシダーゼ1(HO-1)ならびにIDO(インドールオキシゲナーゼ)の誘導を促進した。この効果は抗炎症性サイトカインとして知られているIL-4, IL-10に依存している可能性について検討を加えた。実際、HGFはHO-1, IDOの発現誘導に先立ってIL-10の発現を高める事、IL-10中和抗体を事前に培養系に添加しておくと、HGFによるHO-1, IDOの誘導が有意に抑制される事が明らかとなった。 次いで、ラット骨髄由来DC細胞に対するHGF断片分子Xの機能を解析した。その結果、IL-4刺激したM2型のDC細胞に対して、断片分子Xは免疫抑制サイトカインであるIL-10の産生を転写レベルで約50倍増強させる事を見出した。この事象はIL-10の転写を促進するStat3に対する活性化に依存していた。すなわち、IL-4によるStat3活性化にはERKによるStat3 727番目セリン残基リン酸化ならびにJAK1,2,3によるStat3 706番目チロシン残基リン酸化が必要であるが、断片分子XはERKそのもののリン酸化を顕著に高める事が分かった。さらに断片分子XはJAK1,2,3のリン酸化も増強させる機能を有していた。IL-4-IL4受容体によるシグナル伝達系カスケードに対し、断片分子Xとその受容体(Y)は増強作用といったクロストークを示すことで効率よくStat3核内移行を促進し、IL-10の誘導を高める事を明らかにした。
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