研究実績の概要 |
Indoleamine 2,3-Dioxygenase (IDO) は必須アミノ酸である Tryptophan を N-Formylkynurenine へ代謝する酸素添加酵素である。妊娠時の胎盤ではIDOの発現が顕著に増加し、寛容誘導により50%MHCが異なる胎児に対する拒絶を抑制する。マウスのアロ移植モデルでも高い発現誘導がみられた場合、拒絶反応が抑制されることが知られている。そこで前年度に引き続き、HGFのIDOに対する誘導の可能性を検討した。 (1) LPSで刺激したマクロファージやDC細胞ではTNF-alphga,IL-1beta,IL-6といった炎症性サイトカインの産生が上昇した。(2) LPS刺激系にHGFを添加すると、炎症生サイトカインの産生は抑制された。(3) LPS刺激系にHGFを添加すると、用量相関性にIDOの発現上昇が見られた。(4) HGFによる炎症性サイトカインの産生抑制はIDO阻害剤(1-メチルトリプトファン)により解除された。(5) 生体内プロテアーゼでHGFから断片化をうけた分子(HGF断片X)はDC細胞に対し、免疫寛容に重要なIL-10の誘導を顕著に促した。(6) この反応はc-Met knockdownの系ではキャンセルされず、ある受容体のknockdownにより抑制された。以上の結果から、HGFはIDO誘導を介して炎症性サイトカインの上昇抑制をもたらす一方、HGF断片Xはc-Met非依存的にIL-10を著増させ、免疫寛容を促している可能性を明らかにした。
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