我々は進行胃癌と早期胃癌の遺伝子異常を比較することで、胃癌の発生及び進行段階で蓄積される異常を同定してきた。特に早期胃癌に比べて進行胃癌で有意に高頻度に検出される染色体20q13領域のゲノム増幅に注目し、そこに胃癌関連遺伝子のスクリーニングを行った結果、DDX27が候補として同定された。DDX27発現亢進が胃癌の発生もしくは進行段階に関与するか否か、個体レベルで明らかにするためにこれまでDDX27トランスジェニックマウスの作製を続けてきた。その一方で、DDX27過剰発現が細胞に与える影響を明らかにするため、20q13領域がゲノム増幅し、DDX27が過剰発現している細胞株で発現抑制実験を行った。その結果、DDX27を過剰発現している胃癌細胞株では発現抑制により、強いコロニー抑制能が観察された。さらに、DDX27が胃癌の治療標的となり得るか明らかにするために、DDX27に対するshRNA発現細胞株を樹立し、動物へ移植し、腫瘍形成能を解析した。その結果、DDX27が個体レベルで腫瘍形成能に必須であることを示すことが出来た。平成29年度はDDX27が腫瘍形成に関わるメカニズムを明らかにするためにDDX27の部位欠失変異体を作成し、腫瘍形成に重要であるドメインを明らかにした。また、DDX27が関わるシグナル伝達経路を明らかにするため、DDX27発現抑制細胞を用いてリン酸化アレイを行った。その結果、DDX27発現抑制によりAKTのリン酸化が著しく低下することが分かった。このように、我々はDDX27が自身の特定のドメインを介して、AKTシグナルを制御することでコロニー形成能に貢献することを示した。以上の結果は、今後DDX27を標的とした治療法の開発に大きく貢献すると考えられ、現在論文作成中である。
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