研究課題/領域番号 |
15K08408
|
研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
千葉 知宏 杏林大学, 医学部, 学内講師 (60398617)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 癌幹細胞 / グリオブラストーマ / 微小環境 / STAT3 / STAT5 |
研究実績の概要 |
本研究では、癌幹細胞化を促進・維持する微小環境(ニッチ)の制御機構を解析する。これまでに、癌幹細胞(Cancer stem cell, CS C)が通常の癌細胞からStat3, p53などのストレス関連シグナルを介してエピジェェネティックに誘導され、特にin vivoでは腫瘍壊死部周辺など、特異的な微小環境に存在するという知見を得た。本研究では、「化学療法や低酸素などのストレスによってCSCニッチが形成される」との仮説を検証する。 本年度も引き続き、グリオブラストーマ(GBM)の幹細胞性獲得条件、メカニズムの解析を目的とした研究を展開した。具体的には、ヒトGBM由来培養細胞を用いて、各種細胞ストレスを加えた際に幹細胞性が誘導されるシステムの構築と、GBM幹細胞にて重要な機能を有するSTAT3分子に注目し、STAT3関連経路に遺伝子操作を加えることにより、幹細胞性獲得にどのような影響を及ぼすかを解析した。 これまでの検討で、細胞ストレスとしては低酸素、抗癌剤処理、酸性液処理などによって幹細胞関連遺伝子の発現が誘導されることが明らかとなったが、GBM幹細胞濃縮に利用できるCD133, SSEA-1によるソーティング系の構築が困難であった。幹細胞性獲得メカニズムの解析では、STAT3とそのファミリー遺伝子を同時にノックダウンする系を立ち上げ、シグナル伝達経路の詳細を検討した結果、STAT3およびSTAT5の同時ノックダウンが幹細胞性獲得を著明に抑制することが明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. GBM幹細胞化系の確立、2. GBM幹細胞化メカニズムの解析(STAT3活性化に注目して)という2項目に関しては、概ね計画通りに研究が進捗した。具体的には、GBM幹細胞化系として、GBM細胞株U87MGおよびA172細胞を用い、低酸素ストレス、紫外線照射、抗癌剤処理、酸性液処理などのストレスを加えることによって幹細胞性が獲得されることを確認した。CD133とSSEA-1を利用したソーティングの条件検討に予想以上の時間がかかったことで、全体の計画がやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
癌幹細胞化シグナル伝達経路の詳細を検討した結果、STAT3およびSTAT5の同時ノックダウンが幹細胞性獲得を著明に抑制することが明らかとなった。また、最近、EGFRvIII変異がSTAT3及びSTAT5を直接リン酸化(活性化)することが報告された。予備的検討から、STAT3及びSTAT5を同時に阻害する化合物を見出しており、現在の標準治療薬であるテモゾロミドとの併用療法の可能性を検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究用消耗品の購入と実験の進捗状況により、繰越金が発生した。大幅な変更ではない。次年度の物品費として研究用消耗品に使用する。
|