研究課題/領域番号 |
15K08409
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
望月 早月 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 外科学, 助教 (80365428)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ADAM28 / 分子標的薬 / 肺癌 / 転移 |
研究実績の概要 |
Human combinatorial antibody libraryからADAM28に反応する抗体(211-14)を獲得し、本抗体はADAM28のinsulin-like growth factor binding protein -3分解活性を阻害し、ADAM28高発現ヒト肺腺癌細胞株(PC-9)のIGF-I誘導性細胞増殖とvon Willebrand factor誘導性アポトーシスを濃度依存的に抑制した。次に、LuciferaseとVenus融合遺伝子を導入したPC-9 ffLuc-cp156を作製し、マウス尾静脈内注入による肺転移モデルで本抗体の作用を検討した。PC-9 ffLuc-cp156細胞尾静脈内注入翌日から腹腔内へ211-14抗体を投与した結果、肺転移は有意に抑制され、生存率の著しい改善とともに10匹中3匹では腫瘍の完全消失がみられた。また、PC-9 ffLuc-cp156細胞尾静脈内注入3週後に抗体治療を開始した実験では、全身転移の有意な遅延がみられ、50%生存率が1.4倍延長した。本抗体と肺癌に対する既存の抗体医薬(Bevacizumab)と抗癌剤(Docetaxel)との効果を比較検討したところ、本抗体+Docetaxel投与群では、Bevacizumab+Docetaxel投与群より有意なマウス生存率の延長を認めた。さらに、本抗体の副作用を検討するために、マウスADAM28と反応する抗体を正常マウスに多量投与したところ、10匹中1匹で精巣上体導管の拡張・破壊が見られたが、全身臓器の病理学的異常や血液・血清学的異常は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で行う細胞膜上でのADAM28活性調節機構の解析は、ADAM28の癌細胞膜上での作用機序の理解のみでなく、ADAM遺伝子ファミリー分子全体の活性調節研究に貢献する可能性がある。また、ADAM28分子を標的とした完全ヒト型抗体の詳細な検討は、将来的に本抗体を用いた臨床治験を進めるために必須の情報を与えることが期待されるためおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
免疫組織化学染色の結果、我々が開発した211-14抗体は分泌型ADAM28に特異的に反応し、211-12抗体は分泌型および膜型ADAM28共通領域の3次構造を認識することを明らかにしている。そこで、今後は、分泌型ADAM28と膜型ADAM28を癌細胞に過剰発現させ、細胞膜分画よりヒト型ADAM28抗体を用いてADAM28結合分子の免疫沈降を行う。対照としてコントロールIgGで同様に免疫沈降し、免疫沈降物をSDS-PAGEで展開し、ヒト型抗ADAM28抗体で検出された結合タンパク質をLC-MS/MS法により同定する。さらに、同定した分子とADAM28との相互作用をリコンビナントタンパク質を用いて証明し、結合ドメインの決定とともに相互作用による潜在型ADAM28の活性化や活性型ADAM28の活性変化を詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題はいずれも我々の研究施設で行い、現有研究設備で実施可能である。従って、設備備品の購入は必要ではなく、各実験に用いる試薬、細胞培養液、抗体、プラスチック器具などの消耗品とマウスの管理飼育費が必要である。
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次年度使用額の使用計画 |
上記試薬やマウス管理飼育費を申請する。また、平成29年度の研究成果の発表を日本癌治療学会、日本結合組織学会、Gordon Research Conference on Matrix Metalloproteinase(アメリカ)などで行う予定であり、旅費を申請する。29年度にこれらの研究成果を論文にまとめた際の研究成果投稿料・別刷り料を申請する。
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