研究課題
本研究では、ADAM分子の中でも癌細胞増殖・浸潤・転移への関与が注目されているADAM28にターゲットを絞り、ヒト癌細胞膜上におけるADAM28の活性調節機構と癌細胞浸潤の分子機構の解明を目指して研究を遂行した。Human combinatorial antibody libraryからADAM28に反応する抗体(211-14)を獲得し、本抗体はADAM28のinsulin-like growth factor binding protein -3分解活性を阻害し、ADAM28高発現ヒト肺腺癌細胞株(PC-9)のIGF-I誘導性細胞増殖とvon Willebrand factor誘導性アポトーシスを濃度依存的に抑制した。次に、LuciferaseとVenus融合遺伝子を導入したPC-9 ffLuc-cp156を作製し、マウス尾静脈内注入による肺転移モデルで本抗体の作用を検討した。PC-9 ffLuc-cp156細胞尾静脈内注入翌日から腹腔内へ211-14抗体を投与した結果、肺転移は有意に抑制され、生存率の著しい改善とともに10匹中3匹では腫瘍の完全消失がみられた。また、PC-9 ffLuc-cp156細胞尾静脈内注入3週後に抗体治療を開始した実験では、全身転移の有意な遅延がみられ、50%生存率が1.4倍延長した。進行期肺癌転移モデルでは、既知の抗癌剤や抗VEGF抗体よりも有意に増殖・転移を抑制し、生存期間を延長した。また、本抗体をマウスあるいはカニクイザルに過剰投与しても有害事象は認められなかった。本抗体は非小細胞肺癌患者の新規治療薬候補として期待される。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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