研究課題/領域番号 |
15K08411
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
高橋 玲 同志社女子大学, 薬学部, 教授 (60144565)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 癌幹細胞 / アポトーシス / 前駆細胞 / 分化誘導 / p53 |
研究実績の概要 |
ヒト乳癌細胞集団における階層構成の解析を目的とする研究である。特に癌治療に抵抗性を示す癌幹細胞の存在を想定している。実験系としては、A:p53発現誘導による細胞死に感受性を示さない少数の細胞(p53誘導型細胞死耐性群)、B:細胞分化を示さず、すべての階層hierarchyを再構築できる少数の幹細胞(癌幹細胞群)、というA, B両方の性質を示すという条件で抽出された小細胞群を元の集団の性質と比較検討することを進めてきた。乳癌細胞HCC1937は速やかに単一細胞から培養した場合にも、小型から大型の細胞が混在する多形性pleomorphism を示すという特徴がある。HCC1937細胞はp53遺伝子に306CGA->TGA終止コドンが生じており、これにDoxycycline (Dox)でwild-type p53遺伝子の発現誘導ができるプラスミドを安定的に導入したHCC1937/p53を作成した。HCC1937/p53細胞はin vitro においてDox投与後p53発現誘導によって、アポトーシスが誘導される。その際 1W後には1-3%の細胞が生き残る。P53発現亢進によるアトポーシスを免れて生き残った細胞には、乳癌幹細胞のマーカーの1つであるALDH1が陽性を示す細胞が多く含まれることが明らかとなった。また、別の癌幹細胞のマーカーであるSox-2遺伝子の発現との相関関係も認められた。一方、乳管分化誘導に関係するGATA3遺伝子発現はALDH1やSox-2の発現に遅れて出現し、アポトーシスを免れた乳癌幹細胞が自己複製後にhierarchy構築のための分化を示す細胞を生み出していることが明らかとなった。本研究では、治療抵抗性として残存した乳癌幹細胞が再び乳癌集団を再構築する過程を経時的に追うことによって、癌治療の新しいアプローチに重要な知見を提供することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の実験系で得られたp53発現誘導によるアポトーシス抵抗性を示す細胞について、癌幹細胞マーカー(ALDH1, CD44/ CD24, Sox-2)及び乳管形成分化マーカー(GATA3)の解析を行ってきた。今までの報告で乳癌幹細胞マーカーとされているCD44+CD24-/lowの表現型によって分離(ソーティング)される細胞群を対象として我々の用いているp53誘導アトポーシスに抵抗性を示す細胞を比較解析した。現在までに得られた実験結果をまとめると次のようになる。1) p53/アポトーシス抵抗性を示細胞群には、癌幹細胞マーカーであるALDH1とSox-2の発現亢進をすメス細胞が多く含まれる。 2) p53/アポトーシス耐性細胞の細胞周期をKi-67(+)による免疫染色で解析すると、ALDH1(+), Sox-2(+)??それぞれKi-67(+)を示細胞が含まれることが明らかとなった。すなわち、ALDH1とSox2は癌幹細胞のみならず、細胞分裂を行っている癌前駆細胞にも発現していることが分かった。 3) TUNEL法でのアポトーシスの検出率が30-50%と高値を示す。したがって、p53/アポトーシス抵抗細胞群は、静止期の細胞集団ではなく、大部分の細胞は細胞回転が亢進し、かつアポトーシスに陥っていく細胞であるという確認ができた。4) 分化マーカーの発現については、乳管形成誘導因子であるGATA3の発現がDox処理後ALDH1の発現ピークに少し遅れて現れることから、生き残った乳癌幹細胞分化誘導が生じていることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
細胞の形態学的特徴や組織内での細胞集団のふるまいについて検討するためにxenograftを作成してin vitroとin vivoの比較対照を行う。HCC1937/DOXp53細胞をヌードマウス皮下に移植する。2週間後に形成された腫瘍(平均5mmx5mm)を持つマウスにDoxを飲水投与し、経時的に腫瘍を摘出して組織学的に検討する。組織をホルマリン固定後に薄切して切片上で免疫染色やその他の検出を行う。まず、DOX飲水投与でp53発現誘導(p53免疫染色)が生じるかどうかを経時的に確かめる。1)細胞増殖回転(Ki-67 index)およびアポトーシス(TUNEL法)に陥る細胞の頻度を解析する。2) 分化マーカーやEMT関係遺伝子(GATA3、SANAI2、E-cadherin、vimentinなど)の発現様式変化を数値化して検討する。3) 巨細胞を含めた細胞形態の比較(flatな細胞や巨核細胞の数の増減を計測する)4) Slow growingあるいはLabeling retaining細胞をin vivo BrdU標識法で検討する。5) p53/アポトーシス耐性細胞が、少ない細胞数(1x104~105個)で造腫瘍性を示すかどうかを調べる。6) CD44+-CD24-/low細胞およびALDH1陽性細胞についても同様の実験を行なう。7) 細胞ラベリング色素であるPKHを用いて、細胞分列履歴を追跡することで癌幹細胞との関係を解析する。8) 乳癌幹細胞の分化能力を評価するためにvasculogenic mimicry (VM形成) を行う。形成された血管様構造について形態学的及び免疫表現型的に解析を行う。in vitroとin vivoでの結果に違いが出た場合には、生体内の種々の影響を考慮して調べる。
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