研究実績の概要 |
induced pluripotent stem cell (iPSC)は幹細胞としての性格を持ち、その遺伝子情報のリプログラミング過程において、テロメアが伸長することがよく知られている。しかし、その動態については、特に染色体別の解析は不明の点が多く残されている。 iPSCのテロメア長には細胞間(inter-cell)および同一細胞内の染色体間(intra-cell)でも大きな幅があるものの、iPS化に伴い由来細胞と比し平均値(中央値)は有意に増大し、リプログラムによってテロメア長伸長が起こることが示された。これまでのところ、検討したiPSC株が限られていることから、株間で絶対普遍的な染色体特異性ルールは確定できなかったものの、カリオタイピングの精度を上げることにより、以下の新たな現象が明らかにされた。 1)リプログラムによるテロメア長伸長の特異性について;① iPSCテロメア値は新生児値に相当すること、②細胞老化期に高度の短縮を示すテロメアがリプログラム時に平均以上に伸長すること(テロメア長補正機構を示唆)。2)大多数の細胞株で特徴的染色体所見として; ①老化期に著明なテロメア短縮を示す(e.g. 9p, 16p, 22q, Yq)、②老化期に著明に長いテロメアを持つ(e.g. 4q, 14p, Xp, Yp)、③ iPSCで著明に短いテロメアを持つ(e.g. 2p, 3q, Yq)、④ iPSCで著明に長いテロメアを持つ(e.g. 1p, 14p, 14q)、⑤ iPSCと老化期の差異が極めて小さい(あるいは逆転)(e.g. 2p, 3p, 8q, 10q, Yp)、が認められた。3)老化期に好発するTASは成人由来細胞では胎児由来細胞に比し少なかった。以上の結果から、テロメア長はTERT活性亢進のみならずトリミング活性により染色体毎に巧妙に調節されることが示唆された。
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