研究課題
ウイルス感染症、感染がんや難治性炎症性疾患の発症・重篤化メカニズムの解明と炎症・免疫担当細胞の適切な機能制御による新たな疾患治療法開発への応用は重要である。本研究では、神経ペプチド受容体NK2Rを介した神経ペプチドシグナルによるがんの悪性化や炎症性腸疾患の制御メカニズムの解明を行なった。はじめにマウス大腸がん細胞株をIFN-α/βで刺激するとSTAT1依存的にNK2R遺伝子の発現が誘導されることを見出した。マウス大腸がん細胞株を野生型マウスに皮内移植する担がんモデルに対して、NK2R阻害剤を投与した結果、有意に腫瘍の形成が抑制することを見出した。さらに、ヒト大腸がん細胞株をIFN-α/βで刺激するとNK2R遺伝子およびタンパク質の発現が誘導されるとともに、大腸がん患者腫瘍組織のがん細胞においてNK2Rが過剰発現していることを明らかにした。またデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発大腸炎モデルマウスの病変組織においてSTAT1の活性化を確認するとともに、STAT1欠損条件では、明らかな病態の軽減を認めた。さらにDSS誘発大腸炎モデルマウスに対して、NK2Rの阻害剤を投与することで、部分的にではあるが、病変組織への炎症・免疫細胞の浸潤と大腸炎の病態が軽減することを見出した。以上の結果から、大腸炎の発症、がんの発生や悪性化においてSTAT1シグナルやNK2Rを介した神経ペプチドシグナルが関与することが考えられた。今後、炎症、発がんおよびがんの悪性化における神経ペプチドシグナルの詳細な作用メカニズムの解明、下流・関連分子の探索と同定を行なうとともに、実際の炎症性腸疾患患者やがん患者の病態との関連について検証を行なうことで、神経ペプチドシグナルの制御あるいはその阻害による、新しい難治性炎症性疾患やがんの治療法の開発に繋がる科学的エビデンスが得られるものと考えている。
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Cancer Science
巻: 108 ページ: 1947~1952
10.1111/cas.13332
巻: 108 ページ: 1959~1966
10.1111/cas.13330