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2015 年度 実施状況報告書

時計蛋白質CRY1の変異が惹起する膵β細胞の老化様変化と膵島機能異常の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15K08417
研究機関山形大学

研究代表者

岡野 聡  山形大学, 医学部, 助教 (60300860)

研究分担者 中島 修  山形大学, 医学部, 教授 (80312841)
安井 明  東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (60191110)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード膵β細胞 / 脱分化 / 分化転換 / 組織リモデリング / 膵島 / 糖尿病 / 視交叉上核 / 摂食同調振動体
研究実績の概要

アダルトのTgマウス(Cys414-Ala変異 mCRY1-Tgマウス)が示す膵α細胞数の増加と分布異常(S.Okano et al, J Diabetes Investig., 2013)の原因を調べる目的で, 2週齢のマウス膵組織を用いて, 膵島内の膵α細胞領域測定と膵α細胞の増殖能の評価を行った。その結果, 2週齢で既に, 膵島に当たりの膵α細胞エリアは野生型マウスと比較して増加している一方, 膵α細胞の増殖率はTgと野生型マウス間で差は見られず, Tgマウスの膵α細胞数の増加は増殖能の亢進によるものではないことが強く示唆された。アダルトのTgマウス膵β細胞では脱分化が亢進していることは既に見いだしていることから, 膵β細胞から膵α細胞数への分化転換が主因であると考えられる。
アダルトのTgマウス膵島では, サイトケラチン17/19陽性の, 異常な膵管様構造(嚢胞様構造)を伴うことを見いだしたので, 40週齢マウス組織を用いて定量的評価を行い, この膵管様構造は,Tgマウスで高頻度に出現することを明らかにした。さらにこの構造体の一部の細胞はインスリン陽性であることが判った。アダルトのTgマウス膵島で血管新生が亢進していることも明らかになり, Tgマウスの膵島では膵β細胞の消失とともに, 膵島構造のリモデリングが進行していると考えられる。
核内受容体ファミリータンパク質のRORγのmRNAが, Tgマウスの膵島で大きく低下していたので, マウス膵組織を用いた免疫染色を実施し, タンパク質レベルでも顕著に減少していることを明らかにした。
プロテオミクス解析では, 分担者の安井教授が野生型CRY1と比較し変異型CRY1で結合が弱い, 新規CRY1結合タンパク質候補の同定に成功し, 確認のための実験を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

膵β細胞の細胞老化様変化を伴う機能不全や, 膵島構造の変化とその原因となりうる分子機構の解析が, 前年度に引き続き着実に進展した。膵島の膵管様構造体の発見などの新たな知見も得られた。
クリプトクロム(CRY)タンパク質のプロテオミクス解析についても進展した。
Tgマウスの給餌性概日リズムの解析については,とりまとめた研究成果を代表者がヨーロッパ時間生物学会(EBRS/WCC Meeting 2015; マンチェスター)で発表するとともに論文原稿をsleep and biological rhythms誌に投稿し, 平成28年1月7日付でアクセプトされ, 研究成果を学界へ発信することが出来た。

今後の研究の推進方策

これまでの膵島のマイクロアレイの解析から, TGFβ経路やWnt経路に関わる遺伝子の発現が, Tgマウスで変化していることを見いだしており、これらがTgマウス膵β細胞の細胞老化様変化や脱分化をもたらす重要な要因であることが考えられるため, この経路の解析を行う。RORγやDBP, TEF, HLFは Tgマウス膵島で発現が著しく低下していることを明らかにしたが, これらが関与する膵β細胞の代謝の変化も, 膵β細胞機能不全に関連している可能性があり, この観点からの解析も進める。
プロテオミクス解析をさらに継続するとともに, 同定したCRY1結合タンパク質はマウス膵組織を用いた免疫染色や膵β細胞株でのノックダウンして解析する。
Tgマウス膵島の膵管様構造にはインスリン陽性細胞が見られることから, 枯渇した膵β細胞の供給源となっていると考えられる。この生成機序や役割についてさらに詳細に解析するとともに, リネージトラッキングを用いた実験系導入に向けての具体的準備を進める。

次年度使用額が生じた理由

プロテオミクス解析で得られた結果について, 優先順位の高いものから順次実験を実施していることから次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

複数のタンパク質について, プロテオミクス解析の結果を確かなものとするために, HEK293細胞での免疫沈降により結合の確認実験をおこなっている。この実験を広範囲に行いさらに解析の優先順位をしぼり, 同定したタンパク質の機能解析を行う。
実験条件をかえて, CRY1結合タンパク質の探索を継続する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] Unique food-entrained circadian rhythm in Cysteine414-Alanine mutant mCRY1 transgenic mice2016

    • 著者名/発表者名
      Okano S, Yasui A, Hayasaka K, Nakajima O
    • 雑誌名

      Sleep and Biological Rhythms

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • DOI

      10.1007/s41105-016-0050-1

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 変異型クリプトクロムタンパク質がマウスにもたらす概日リズムの異常と膵β細胞の障害2016

    • 著者名/発表者名
      岡野聡
    • 雑誌名

      BIO Clinica 2016年6月号 「インクレチン‐最近の話題」

      巻: 印刷中 ページ: 印刷中

    • 謝辞記載あり
  • [学会発表] Unusual ductal structure in the islet of diabetic cysteine414-alanine mutant mCRY1 transgenic mice2015

    • 著者名/発表者名
      岡野聡, 安井明, 早坂清, 五十嵐雅彦, 中島修
    • 学会等名
      キーストンシンポジア (糖尿病: 新しい分子メカニズムと治療戦略)
    • 発表場所
      ウエスティン都ホテル京都 (京都府京都市)
    • 年月日
      2015-10-25 – 2015-10-29
    • 国際学会
  • [学会発表] Food-entrainable circadian rhythm and pathophisiology in Cys414-Ala mCRY1 transgenic mice2015

    • 著者名/発表者名
      岡野聡, 安井明, 早坂清, 五十嵐雅彦, 中島修
    • 学会等名
      第15回ヨーロッパ時間生物学会(EBRS)・第4回世界時間生物学会連合大会(WCC)
    • 発表場所
      マンチェスター大学 (イギリス)
    • 年月日
      2015-08-02 – 2015-08-06
    • 国際学会
  • [学会発表] Senescence-like phenotype in pancreatic β-cells in diabetic mutant cryptochrome1 transgenic mice2015

    • 著者名/発表者名
      岡野聡, 安井明, 早坂清, 五十嵐雅彦, 中島修
    • 学会等名
      第75回米国糖尿病学会(ADA)
    • 発表場所
      Boston Convention and Exhibition Center (アメリカ)
    • 年月日
      2015-06-04 – 2015-06-09
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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