研究課題/領域番号 |
15K08418
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
市瀬 多恵子 東京大学, 医科学研究所, 助教 (00396863)
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研究分担者 |
市瀬 広武 東京大学, 医科学研究所, 准教授 (10313090)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Ras / MAPキナーゼ経路 / PI3キナーゼ経路 / RalGEF経路 |
研究実績の概要 |
RasはMAPキナーゼ経路のみならず、PI3キナーゼ経路やRalGEF経路などの他のシグナル伝達経路にもシグナルを伝達することがわかっているが、癌化や形態形成におけるRas下流シグナル伝達経路のそれぞれの役割については明らかになっていない。本研究では、特定の下流シグナル経路のみを活性化するRasエフェクター変異体をケラチノサイト特異的に発現する遺伝子導入マウスにおいて、Ras変異体の種類に特徴的な表皮形成や発毛での表現型異常が認められる点に着目し、表皮および毛包の発生・分化におけるRas下流シグナル経路の機能分担や意義を明らかにする。 平成28年度は、以下の結果を得た。MAPキナーゼ経路を特異的に活性化するエフェクター変異体をケラチノサイトで発現するTgマウスにおいて、胎生期におきる表皮層構造の分化は進行するが、生後1週齢までにK5陽性のbasal layerと、K1陽性のsuprabasal layerの肥厚が生じることを組織学的解析により明らかにした。また、EdU取り込みを指標にした細胞増殖を解析し、生後4日目におけるbasal layerでのケラチノサイトの増殖が対照マウスに比べ有意に亢進していることを明らかにした。この表皮の肥厚は、Rafキナーゼ経路の下流に位置するErk MAPキナーゼの発現量を、Erk1およびErk2コンディショナルKOアリルを用いて減少させることで、レスキューすることが可能であった。このことから、Ras下流シグナルのうち、Raf-Erk経路の活性化が、表皮の肥厚に中心的役割を果たしていることが明らかとなった。この成果は、学会において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、K15-CrePRマウスを用いた、in vivoにおけるRasエフェクター変異体の毛包幹細胞における機能の解析を行う予定であったが、K15-CrePRマウスによる遺伝子組み換え効率がCreレポーターマウスの場合と比較して著しく悪く、Rasエフェクター変異体の発現誘導が確認できなかった。現在、他のリガンド誘導型Creマウスを用いることを計画している。 しかし一方で、毛包間表皮における解析を優先的に進めた結果、Ras-Raf-Erk経路の活性化が表皮の肥厚を引き起こすことを明らかにできたことから、おおむね順調に進行しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
K15-CrePRマウスに代わる他のリガンド誘導型Creマウスを用いた、in vivoにおけるRasエフェクター変異体の毛包幹細胞における機能解析を開始する。また、2重Tgマウスよりケラチノサイトの初代培養を行い、増殖、カルシウム依存性の分化についての検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、K15-CrePRマウスを用いた、in vivoにおけるRasエフェクター変異体の毛包幹細胞における機能の解析を行う予定であったが、K15-CrePRマウスによる遺伝子組み換え効率がCreレポーターマウスの場合と比較して著しく悪く、Rasエフェクター変異体の発現誘導が確認できなかった。そのため、毛包幹細胞を対象にした組織学的解析が開始出来なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
K15-CrePRマウスに代わる他のリガンド誘導型Creマウスを導入する資金に充てる。また、毛包幹細胞を対象にした組織学的解析を行うための抗体の購入資金に充てる。
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