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2016 年度 実施状況報告書

新規オートファジー活性によりポリグルタミン病が改善する分子機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 15K08420
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

荒川 聡子  東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 講師 (90415159)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードオートファジー / ポリグルタミン病 / ケミカルバイオロジー / ゴルジ
研究実績の概要

細胞内の不要なタンパク質やオルガネラを分解する機構として、オートファジーは酵母から哺乳動物まで保存されている。近年、酵母の遺伝学を用いてオートファジーの分子機構の解析がすすみ、哺乳動物細胞のオートファジー分子が同定され、これらの欠損マウスの解析によりその生理機能が明らかにされつつある。
一方で、我々はオートファジー必須の遺伝子であるAtg5やAtg7に依存せずLC3の局在化を伴わない新規のオートファジーを哺乳動物において発見した(Nature 2009)。このオートファジーと従来型とは生体内で使い分けられ、例えば赤血球におけるミトコンドリアの除去には新規オートファジーが関与していた(NatureCommun 2014)。
本研究ではこれらの知見を元にケミカルバイオロジーを応用しポリグルタミン蛋白質の発現制御機構の解明や薬剤開発を目指し、以下の結果を得た。
①GFP融合ポリグルタミン(GFP-polyQ)を発現したPC12細胞に約5万種類の低分子化合物を投与し、ハイスループットアッセイによりGFP-polyQの発現を抑制できる24種の化合物を選定した。②さらにこれらの化合物をPolyQ病モデルショウジョウバエ(polyQを複眼に発現させ複眼変性を誘導)に摂食し、変性を改善できる化合物2種 (PQ1とPQ2)を選定した。これらではポリグルタミンmRNA量は変わらず、作用点はタンパク質分解や安定性にあると考えられた。③化合物PQ2を脊髄小脳変性症(PolyQ病)モデルマウスに投与したところ、オートファジーが活性化され脳内の変性タンパク質の蓄積が抑制された。また神経細胞の脱落も抑制され顕著な病態改善を認めた。④PQ2の標的分子の同定に成功した。⑤これらの知見に加え、ゴルジ体を介した新しい蛋白質分解機構の同定に成功し、この機構を破綻させると神経変性疾患に罹患することが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ゴルジ体を介した新しいタンパク質分解機構を同定し、これをGOMEDと命名しEMBO J, 2016に発表した。この機構はタンパク質の細胞外への分泌が阻害されることで引き起こされることがわかった。

今後の研究の推進方策

今後は化合物PQ2の標的分子の同定およびそのシグナル機構の解析をすすめ、ポリグルタミン病の病態制御機構の一端を見出す。
また、新たに見出したゴルジ体を介するタンパク質分解機構の破綻により、マウスでは神経変性疾患に罹患することが分かった。そこで、今後はこのマウスを用いたポリグルタミン病との関連を調べていく。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Golgi membrane-associated degradation pathway in yeast and mammals.2016

    • 著者名/発表者名
      Yamaguchi H*, Arakawa S*(equally contribution), Kanaseki T, Miyatsuka T, Fujitani Y, Watada H, Tsujimoto Y, Shimizu S.
    • 雑誌名

      EMBO J.

      巻: 15 ページ: 1991-2007

    • DOI

      10.15252/embj.201593191

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Ulk1-mediated Atg5-independent macroautophagy mediates elimination of mitochondria from embryonic reticulocytes.2016

    • 著者名/発表者名
      Watanabe Y, Honda S, Konishi A, Arakawa S, Murohashi M, Yamaguchi H, Torii S, Tanabe M, Tanaka S, Warabi E, Shimizu S.
    • 雑誌名

      Nat Commun.

      巻: 21 ページ: 13508

    • DOI

      10.1038/ncomms13508

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Identification of PPM1D as an essential Ulk1 phosphatase for genotoxic stress-induced autophag2016

    • 著者名/発表者名
      Torii S, Yoshida T, Arakawa S, Honda S, Nakanishi A, Shimizu S.
    • 雑誌名

      EMBO Rep.

      巻: 17 ページ: 1552-1564

    • DOI

      10.15252/embr.201642565

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] In Situ Characterization of Bak Clusters Responsible for Cell Death Using Single Molecule Localization Microscopy2016

    • 著者名/発表者名
      Nasu Y, Benke A, Arakawa S, Yoshida GJ, Kawamura G, Manley S, Shimizu S, Ozawa T.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 6 ページ: 27505

    • DOI

      doi:10.1038/srep27505

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] ゴルジ体を介したタンパク質分解システムの発見2016

    • 著者名/発表者名
      荒川聡子、山口啓史、金関悳、清水重臣
    • 学会等名
      第39回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜、パシフィコ横浜
    • 年月日
      2016-11-30 – 2016-12-02
  • [学会発表] ゴルジ体を介したタンパク質分解システムの発見2016

    • 著者名/発表者名
      荒川聡子
    • 学会等名
      第4回新学術「オートファジー」班会議・第10回オートファジー研究会
    • 発表場所
      越後湯沢、NASPAニューオータニ
    • 年月日
      2016-11-14 – 2016-11-15
  • [学会発表] オートファジー細胞死の個体での解析2016

    • 著者名/発表者名
      荒川聡子、辻岡政経、桜井一、山口啓史、吉野育代、清水重臣
    • 学会等名
      第25回日本Cell Death学会学術集会
    • 発表場所
      品川区、品川区立総合区民会館きゅりあん
    • 年月日
      2016-09-09 – 2016-09-10

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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