研究実績の概要 |
本研究は、神経細胞の細胞老化が加齢性神経変性疾患の病態形成に関与するか否かを明らかにすることを目的として行った。平成29年度は、個体の促進老化と学習記憶障害を示すSAMP8マウスと、正常老化を示すSAMR1マウスの胎仔大脳皮質由来神経細胞の長期培養サンプルを用いた解析を進めた。8週間培養を行った神経細胞を経時的にサンプリングし、老化関連βガラクトシダーゼ(Senescence-associated β-galactosidase: SA-β-gal)染色を行ったところ、SAMP8由来神経細胞は培養14日目より少数(5.4±3.4 %, n = 4)の陽性細胞が見られ、培養42日目まで経時的に陽性率が上昇した(47.5±12.9%, n = 4)。一方SAMR1由来細胞では培養14日目ではほとんど陽性細胞は見られず(0.2±0.3%, n = 4)、42日目でもSAMP8由来細胞に比べて陽性細胞率は低かった(8.2±1.8%, n = 4)。他の細胞老化のマーカーとして、γH2AXとmH2Aの免疫細胞化学を行った。γH2AX陽性細胞は培養14日目では両系統由来神経細胞とも少数であったが、28日目以降経時的に増加し、その程度に明らかな系統差は見られなかった。また、mH2A陽性細胞は培養14日目で既に両系統由来神経細胞で多数みられ、陽性細胞率に明らかな系統差は見られなかった。 上記in vitro実験と平行してSAMP8マウスの加齢による神経病理学的変化の解析を行った。3種類のamyloid β抗体(4G8, 12B2, BAM90.1)を用いた免疫染色で、4G8は海馬に顆粒状の陽性所見、他の2つは樹状突起や脳梁の線維状の陽性所見を認めた。
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