研究課題/領域番号 |
15K08426
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
北澤 理子 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (00273780)
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研究分担者 |
原口 竜摩 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00423690)
水野 洋輔 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教 (90748021)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / RANK / 遺伝子プロモータ / 転写因子 / メチル化 |
研究実績の概要 |
I) マウスRANK遺伝子の基本転写調節に関する検討-2)翻訳開始部位より200bpのCpGメチル化を介する転写制御の解析: RANK遺伝子の翻訳開始部位から約200bpにあるCpG islandメチル化による転写制御について、細胞老化のモデルとして、培養細胞RAW cellを用い、継代依存的なメチル化とRANK発現低下、破骨細胞形成低下を示した。高継代数RAWcellへの5Aza-dC処理による脱メチル化で、破骨細胞分化の回復傾向を確認した。 II) 新規splicing variant であるvRANKによる破骨細胞抑制機構-1)vRANKのsplicing制御機構の解析:HL60細胞を用い、MEK阻害剤やSam68 siRNA投与で、vRANK発現低下を確認した。この時、破骨細胞形成の変化についての検証を進めている。-2)vRANK遺伝子改変動物の解析:vRANK組織特異的発現の骨量へ効果を調べる目的で、LSL-svRANKマウスと、市販のLysM-Cre、他施設供与のRANK-Creマウスとの交配により、骨組織特異的なvRANK強制発現の実験系を構築した。RANK-Creマウス(破骨細胞特異的発現)では、今のところ明らかな骨量変化は認めなかった。LysM-Cre(マクロファージ系列特異的発現)では、脾臓細胞の培養実験で破骨細胞分化抑制傾向を認めた。10週令での骨量変化は有意ではないが、さらに週令を経たマウスについて個体数を増やし、検討を進めている。 IV) 骨巨細胞腫における破骨細胞形成機構2) 腫瘍抗原の発現局在と臨床病理学的検討:骨巨細胞腫の組織標本を抗原として作成したモノクローナル抗体2種類について、2次元電気泳動に展開して該当するspotを切り出し、抗原蛋白の質量分析を進めた。 上記の成果は、日本病理学会総会、日本骨代謝学会、米国骨代謝学会ASBMRにて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果概要で述べた項目については、順調に研究を進め、実験条件の調整により、有意な知見が集積しつつある。 I) マウスRANK遺伝子の基本転写調節に関する検討-2)翻訳開始部位より200bpのCpGメチル化を介する転写制御の解析: 概ね順調に進行し、マウス前破骨細胞培養を加齢現象のモデルとして、有用な知見を得ている。 II) 新規splicing variant であるvRANKによる破骨細胞抑制機構-1)vRANKのsplicing制御機構の解析:HL60細胞を用いvRANK発現低下が破骨細胞形成の回復に繋がる可能性を検討しており、順調に進んでいる。 -2)vRANK遺伝子改変動物の解析:2系統の組織特異的vRANK過剰発現マウスについて、順調に解析を進めている。 IV) 骨巨細胞腫における破骨細胞形成機構:骨巨細胞腫の組織標本を抗原として作成したモノクローナル抗体2種類について、組織化学的に巨細胞腫組織内での分布を検討すると共に、全身諸臓器における発現分布を解析し、2種類の抗体で相互に異なり、特徴的な分布様式を確認した。それぞれを2次元電気泳動に展開して該当するspotを切り出し、抗原蛋白の質量、分析を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には順調に研究を進め、有意な知見が集積しつつあるが、さらに詳細を詰めると共に、新たな実験系を構築することを目指す。 I) マウスRANK遺伝子の基本転写調節に関する検討-2)翻訳開始部位より200bpのCpGメチル化を介する転写制御の解析: マウス前破骨細胞培養を加齢現象のモデルとして有用な知見を得てことを踏まえ、高齢マウスと若齢マウスの組織DNAを対象に解析を進める。 II) 新規splicing variant であるvRANKによる破骨細胞抑制機構-1)vRANKのsplicing制御機構の解析:ヒト培養細胞レベルでvRANK発現低下が破骨細胞形成の回復に繋がる機構について、マウスの系でも解析を進める。 -2)vRANK遺伝子改変動物の解析:2系統の組織特異的vRANK過剰発現マウスについて、順調に解析を進めている。 IV) 骨巨細胞腫における破骨細胞形成機構:骨巨細胞腫の組織標本を抗原として作成したモノクローナル抗体2種類について、2次元電気泳動による抗原蛋白解析の知見に基づいて、巨細胞腫に特徴的な変異Histon3.3で制御される遺伝子群に着目して、解析を進める。手術検体の病理組織標本を用いた解析を行い、臨床病理学的知見を得ることをめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画では、vRANK遺伝子改変動物について、骨組織特異的発現の3系統を解析する予定であった。2系統については、科研費使用開始時期までに動物を入手、繁殖していたため、作成費用を支出する必要がなく、飼育費用と標本作製や試薬、培養費用などが初年度の支出となった。所属研究室の他の経費、分子病理学研究に対する委任経理金、医科学研究学生研究費なども消耗品購入の一部に充当することが出来て、次年度使用額が発生した。これらについては実験は、順調に進行している。3つめの系統については、初年度に入手することが出来ず、飼育費用などが次年度の負担となるため、次年度使用額を有効活用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
vRANK遺伝子改変動物について、骨組織特異的発現の3系統について解析を進める。2系統については、初年度にすでに作成、飼育状況であるが、3系統目のCTSKcre+/vRANKについては、CTSKcre+を2年目に入手して交配し、遺伝子改変動物の作成を行う。動物購入、飼育費用などが全て2年目の負担となるため、前年度からの移行分を併せて物品費にあてる予定である。
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