研究実績の概要 |
骨粗鬆症や癌の骨転移、リウマチなどの骨吸収病態では、破骨細胞が治療標的となる。破骨細胞最終分化には破骨細胞分化因子(RANKL)と受容体RANKの結合が不可欠である。申請者らは、破骨細胞前駆細胞において受容体RANK発現を誘導する転写因子ネットワーク(PU.1, MITF, NFATc1, c-Fos/AP-1)の解析を行うともに、受容体RANKの発現を抑制するシステムについては、CpGメチル化を介するsilencing、STAT結合配列を介する転写抑制、新規splicing variant vRANKの生物学的作用の解析、の3つの観点から研究を行い、新たな治療戦略に繋がる知見を集積してきた。申請者らはRANK遺伝子5'側上流領域約5kbを単離し、転写開始部位を決定し、血球分化の転写因子MITF、PU.1の結合配列に加え、破骨細胞分化のmaster regulatorである NFATc1、c-Fos/AP-1結合部位を同定した 。興味深いことに、受容体RANK自体が、RANKL-RANKシグナルで誘導される破骨細胞分化形質のTRACPやカテプシンKの遺伝子プロモータと共通構造を持っており、それは、受容体RANKを増すことでRANKLシグナルの飛躍的増大をもたらすpositive feedback機構の存在を示した。癌の骨転移や、廃用性骨萎縮の病態では、短時日に急峻な骨吸収/高カルシウム血症を来し、制御困難となる事例がある。ビスホスホネート製剤やRANKL中和抗体に加えて、「転写因子レベルの破骨細胞抑制」という新たな治療戦略に繋がる知見を得さらに、破骨細胞形成分子機構の知見に基づいて、骨巨細胞腫の組織内でのRANKL-RANK発現制御と、腫瘍特異抗原の解析との2つの観点から、骨巨細胞腫の腫瘍発生の解明、抗RANKL抗体を用いた治療戦略に於ける病像の変化について詳細を検討し、国際学会、国内のカンファレンス、英文論文として国内外に広く報告を行った。
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