研究実績の概要 |
今年度は耐熱性腸管毒素(STa)の立体構造を保持したまま高発現させる方法を検討した。特にコレラ毒素B鎖(CTB)とSTaとの融合タンパク質を大腸菌で発現させることを試みたが、STa内の複雑なジスルフィド結合の組み合わせのため、天然型立体構造をもったSTaとして高発現させることには至っていない。しかし、耐熱性腸管毒素にはaタイプ(STa)とbタイプ(STb)があり、これらは構造的にも血清学的にも全く異なるものである。さらに、STbは疫学的にも特に動物(豚等)に感染する病原性大腸菌から比較的頻繁に見出される。よって、STaの効率よい発現系確立と同時にSTbの発現系確立も重要課題である。我々はこのSTbの発現系確立のため人工遺伝子を構築し、その発現系確立に向け研究を進めている。また、我々はCTBの大腸菌封入体からの巻き戻し法を既に確立しているため(Tamaki et al., 2016)、CTB-STb融合タンパク質の巻き戻しも検討すべき課題でると考えている。
CTB-STb融合タンパク質は、全体を大腸菌コドンへ最適化している。また、発現ベクターは37℃および低温誘導も可能としているため、封入体発現とそれに続き巻き戻し、ならびに、分泌発現させることも理論上可能である。よって、平成28年度の遺伝子構築作業に基づき、平成29年度はSTaの発現系確立と同時にSTbの発現系確立を目指す必要がある。
Tamaki Y, Harakuni T, Yamaguchi R, Miyata T, Arakawa T. (2016) Cholera toxin B subunit pentamer reassembled from Escherichia coli inclusion bodies for use in vaccination. Vaccine 34:1268-1274.
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