研究実績の概要 |
本研究では腸管毒素原性大腸菌(ETEC)が産生する易熱性腸管毒素(LT)ならびに耐熱性腸管毒素(STaおよびSTb)に対する組換えトキソイドワクチンの開発を進めてきた。特に、申請者らは、LTのBサブユニット(LTB)と交叉反応性を示すコレラ毒素(CT)Bサブユニット(CTB)のタンパク質巻き戻し法による高発現に成功した実績に基づき、CTBとSTの融合タンパク質(rCTB-STaおよびrCTB-STb)の高発現を目指してきた。さらに、ETEC流行株の中でも重要な定着因子CS6の分子デザインも進めてきた。 申請者らのこれまでの実験から、CTBは封入体からの巻き戻しによって、天然高次構造を回復した5量体分子として再構築することが可能であることが分かってきた(Tamaki et. al., 2016, Vaccine 34:1268-1274.)。申請書らはこの技術に基づき、rCTB-STaならびにrCTB-STbの巻き戻しが可能であるとの仮定を立て、種々の条件によって融合分子の巻き戻し実験を繰り返してきたが、複雑なジスルフィド結合の組み合わせをもつST分子を天然型の構造として再構築することには未だ成功していない。 よって、申請者らは、封入体の純度を高めることで巻き戻し効率が格段高まることを明らかにした(Tamaki et al., 2016)ことに加え、結束分子として機能するコイルドコイル分子(COMP)とCTBとを融合化させることでも、この巻き戻し効果が高まることを既に確認しているため(Arakawa and Harakuni, 2014, Vaccine 32:5019-5026.)、現在、rCTB-COMP-STaならびにrCTB-COMP-STbの巻き戻し実験を繰り返し、至適条件を模索している。
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