研究実績の概要 |
前年度までに、骨髄由来マクロファージにおいてはTAK1-binding protein 2 (TAB2)がリポポリサッカライド(LPS)刺激によるインターロイキン-1b(IL-1b)の産生を抑制すること、その機序はpro-IL-1bの発現制御ではなくインフラマソームの活性制御を介すること、また、TAB3はこれには全く関与しないことを明らかにした。平成29年度は、TAB2によるインフラマソームの活性制御機構の解明に取り組んだ。貪食細胞特異的Tab2欠損マウスと各種のインフラマソーム構成因子(Nlrp3, Asc, Caspase1)の二重欠損マウスを作出し、骨髄由来マクロファージを調製して、LPS刺激後のIL-1bの産生および細胞生存率をELISA法および細胞外LDH活性測定によりそれぞれ調べた。その結果、Tab2欠損マクロファージにおけるIL-1bの産生はインフラマソーム依存的、細胞死の誘導はインフラマソーム非依存的であることが明らかとなった。抗TNFa中和抗体またはNecrostatin-1を添加することにより、LPS刺激後のTab2欠損マクロファージにおけるIL-1bの産生と細胞死がともに抑制されたことから、マクロファージが産生する腫瘍壊死因子(TNFa)がautocrineに作用してネクロプトーシスが誘導される可能性が高い。以上の結果から、Tab2欠損マクロファージではLPS刺激によってTNFa依存的にネクロプトーシスが亢進しdanger-associated molecular pattern (DAMP)が放出されるために、インフラマソームが活性化されると考えられる。本研究の成果は、動脈硬化やメタボリック症候群などの炎症性疾患に対する新たな予防法や治療法の開発に繋がる基盤的知見となるものである。
|