研究課題
本年度は培養大動脈平滑筋細胞に石灰化が生じる条件設定を確立することから開始した。培養液中のカルシウム濃度を0.6mMと2.0 mMに固定して、リン濃度を3 mMにまで増加した。これ実験により培養大動脈平滑筋細胞が安定して石灰化を起こす濃度をカルシウム2.0 mMとリン濃度2.7 mMとした。この条件で大動脈平滑筋細胞を培養後3日、7日、9日で培養細胞を固定して免疫組織化学を行うか、細胞からRNAを抽出してreal-time PCRを行った。また細胞からタンパクを抽出し、ウェスタンブロットを行った。本研究では血管平滑筋細胞のリン誘導石灰化における、酸化ストレスとオートファジーとの関連について特に焦点を当て行った。酸化ストレスについてはKeap1とNrf2およびNrf2の下流遺伝子であるNQO1とHO1に着目した。またオートファジーに関してはLC3とp62に着目し、酸化ストレスとの関連について検索した。血管平滑筋細胞の石灰化の程度はアリダリンレッド染色およびvon Kossa染色の強さを指標として判断した。蛍光免疫組織化学では石灰化の程度が強くなるに従って細胞質のKeap1の染色性が低下した。同時にNrf2は細胞質から核内に移行し、核内で沈着する様子が窺えた。しかしながらreal-time PCRによるmRNA量の定量では有意な変動は認められなかった。またp62では石灰化と共にタンパク量の増加がみられた。今後p62とKeap1, Nrf2との関連を検索し、血管石灰化におけるオートファジーと酸化ストレスとのクロストークを解明していく予定である。
3: やや遅れている
実験の条件が定まらず、基本的な条件設定からやり直す必要が生じたため、余分な時間を費やした。
培養大動脈平滑筋細胞を用いた血管石灰化モデルにおいて、高リン刺激により細胞内で生じるオートファジーと酸化ストレスとの関連を検索していく。
次年度使用額として56,241円生じたが、これは可及的完全に使い切るように努力した結果生じた少量の余剰金であり、特に特段の理由があるわけではない。
ウエスタンブロット用の他のタンパクを認識する抗体の購入に当てたいと考えている。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件)
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