研究課題/領域番号 |
15K08432
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研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
広瀬 幸子 桐蔭横浜大学, 医用工学部, その他 (00127127)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 全身性エリテマトーデス / 自己抗体産生B細胞 / 抑制性igG Fc受容体 / 胚中心 / Yaa変異遺伝子 |
研究実績の概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)を自然発症するモデルマウス系を用いて、自己抗体産生B細胞の制御機構におけるリンパ瀘胞胚中心の役割を解析することを目的とする。用いるマウス系は、我々が独自に開発した細胞特異的に抑制型IgG Fc受容体であるFcγRIIB分子の発現を欠損し、さらに自己免疫促進Yaa変異遺伝子を導入したB6マウスである。 解析の結果、すべての細胞でFcγRIIB分子の発現を欠損したYaaマウス系およびB細胞のみでFcγRIIB分子の発現を欠損したYaaマウス系では、病的自己抗体産生B細胞は、脾臓のリンパ瀘胞胚中心ではなく、主に瀘胞外領域で形成されているのに対して、樹状細胞, 単球/マクロファージ細胞などのmyeloid系細胞でFcγRIIB発現を欠損するYaaマウス系では、自己抗体産生B細胞はリンパ瀘胞胚中心で形成されていることが判明した。以上の結果から、B細胞におけるFcγRIIB発現欠損は、自己抗体産生B細胞の自発的活性化が起こり、この現象には瀘胞胚中心の形成は関与しないと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
自己抗体産生B細胞の活性化の抑制は、近年、SLEの新規治療法として注目されている。しかし、本研究から、myeloid系細胞の活性化が、濾胞胚中心形成を伴う自己抗体産生B細胞の活性化に寄与していることが判明した。したがって、myeloid系細胞の活性化抑制が新たなSLEの治療ターゲットとなる可能性を得たことは、注目される。
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今後の研究の推進方策 |
瀘胞外領域B細胞によって産生される自己抗体と、胚中心B細胞で産生される自己抗体の病原性の差異を、ループス腎炎発症の程度を比較することで解析する。すべての細胞でFcγRIIB発現を欠損するYaaマウス系では、高度のループス腎炎が発症し、7ヶ月で約半数のマウスが腎不全で死亡する。現在、B細胞あるいはmyeloid系細胞でのみFcγRIIB発現を欠損するYaaマウス系のプス腎炎の程度を解析している。 B細胞上のFcγRIIB発現欠損はB細胞を活性化し、自己抗体産生能を亢進させると報告されている。一方、抗原提示細胞である樹状細胞やマクロファージ上でのFcγRIIB発現欠損は、T細胞に対する抗原提示能を亢進するという報告があるが、B細胞に対する影響については、現在、考察がなされていない。 今回の我々の解析から、myeloid系細胞のみでFcγRIIB発現を欠損するYaaマウス系で、胚中心B細胞の活性化が見られたことから、今後は、今まで知られていないmyeloid系細胞による自己抗体産生B細胞の活性化機序を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の残額では、尿タンパク測定装置を購入するには不十分であるので、残額を次年度に繰り越して、次年度に本装置を購入するため。本装置は蛋白尿の測定に必須であり、次年度に測定を予定している。
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次年度使用額の使用計画 |
ループス腎炎の程度を測定する必要があり、尿タンパク測定装置(シーメンスDCAバンテージ,389880円)を購入する。
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