研究課題
平成27年度は、EBI3とp19の結合について検討を行った。まず、ヒトHEK293T細胞にマウスEBI3とFLAGタグ付きのp19を強制発現させた後、その細胞溶解液を調製し、抗FLAG抗体で免疫沈降後、ウエスタンブロット解析よりp19と共にEBI3が共沈してくることが示された。この時、同時に内在性のカルネキシンも共沈してくることがわかり、細胞外へのEBI3とp19の分泌量は低くかった。カルネキシンは小胞体に局在する蛋白質であるため、カルネキシンとの結合が細胞外へ効率よく分泌されない原因の1つと考えられた。そこで、次にsiRNAを用いて内在性カルネキシン発現をノックダウンしたHEK293T細胞を用いて同様に細胞上清へのこれらの分子の分泌を調べたが、ノックダウンしていない細胞と殆ど変わらなかった。この原因が、ノックダウンの程度が低いことが原因である可能性と、カルネキシンと同様な分子シャペロンであるカルレティキュリンへの結合の可能性も考えられた。そこで、次に、EBI3のカルレティキュリンへの結合を、同様にHEK293T細胞へ遺伝子導入後免疫沈降反応とウエスタンブロット解析により検討したところ、EBI3は内在性カルレティキュリンにも結合することがわかった。そこで、現在、このカルレティキュリンの発現を完全に無くすためCRIPSR Cas9を用いたゲノム編集により発現を欠失した細胞を調製中である。さらに、生理的条件下でのEBI3とp19の会合を調べるため、LSPで刺激した骨髄由来未樹状細胞の細胞溶解液を用いて、両者が共沈してくるかについて調べたところ、共沈が見られることがわかった。現在さらに、その培養上清中での会合も検討中である。
2: おおむね順調に進展している
おおむね予定通りに進んでいると思われる。EBI3とp19の会合は見られることがわかったが、今後の活性のある組換え精製蛋白質の作製がチャレンジングである。
(1) 組換え精製EBI3/p19蛋白の作製と機能解析① カルネキシンを含むFLAGタグ付きの1本鎖マウスEBI3/p19を、または、カルネキシンは共発現させるだけで良いかも知れないが、上記の検討で得た最良の条件で発現させ、同様に機能的な分子が培養上清中に分泌されるか検討する。分泌が確認できれば、次にスケールアップして調製した培養上清から抗FLAG抗体カラムで精製蛋白を作製する。② 作製した精製EBI3/p19蛋白が機能的であるかを、ナイーブCD4+T細胞を種々のTh分化条件下で抗CD3/抗CD28で刺激し、それぞれのTh細胞への分化誘導能力を調べる系に加えて明らかにする。Tgマウスやin vivo投与の結果よりTh17細胞分化促進に作用する結果が得られているので、特にIL-23との作用の違いを比較検討する。(2) EBI3/p19のレセプターとシグナル伝達機構の解明① 機能的精製EBI3/p19蛋白を用いて、次に、そのレセプターやシグナル伝達系を明らかにする。まず内在性のgp130を発現しているHEK293T細胞にIL-23Rと(GAS)3-Luciferase reporterをIL-12Rβ1の有無で強制発現させ、EBI3/p19または比較のためIL-23で刺激し、ルシフェラーゼ活性を測定し刺激が入るようになるか調べる。刺激が入れば、次に、刺激後経時的に細胞溶解液を調製しSTAT3とSTAT4のリン酸化を調べる。② 野生型とlck-Cre/STAT3flox/flox、STAT4欠損マウス由来のCD4+T細胞をTh17分化条件下で活性化後、EBI3/p19またはIL-23で刺激し、細胞増殖やサイトカイン産生へのSTAT3とSTAT4の関与を明らかにする。
最終的に使用金額をぴったり合わすのが難しいため。
主に、消耗品代に使用する予定であある。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Oncoimmunology
巻: 4(10) ページ: e1042200
10.1080/2162402X.2015.1042200
Cancer Sci.
巻: 106 (9) ページ: 1103-1110
10.1111/cas.12731