研究課題
(1) 組換え精製EBI3/p19蛋白質の作製と機能解析(2) EBI3/p19のレセプターとシグナル伝達機構の解明FLAGタグ付きの1本鎖マウスEBI3/p19発現プラスミドを作製し、HEK293T細胞に一過性にtransfectし上清を抗FLAG抗体カラムにかけ組換え精製EBI3/p19蛋白質を調製した。また、この蛋白質の想定されるレセプターは、gp130とIL-23Rであるので、これらとさらにIL-12Rb1およびIL-12Rb2の発現ベクターを、因子依存的に増殖するB細胞株BaF/3細胞に遺伝子導入した。このBaF/3細胞は、3H-thymidineの取り込みによりIL-12、IL-23、IL-27のいずれのサイトカイン刺激によっても濃度依存的に細胞増殖を誘導した。ところが、この組換え精製EBI3/p19蛋白質は、抗FLAG抗体によるウエスタンブロット解析によりしっかりとした目的のバンドが見られたにも関わらず、このBaF/3細胞の増殖を誘導できなかった。この細胞は、IL-35のレセプターであるgp130とIL-12Rb2を発現しているので、IL-35に反応するはずであるが、市販の組換え精製IL-35蛋白質を用いても増殖は誘導できなかった。そこで、HEK293T細胞へ遺伝子導入し、細胞溶解液を用いた免疫沈降反応により、カルネキシンは、EBI3やp19およびp35と結合したが、IL-27のp28とは結合が殆ど見られないことがわかった。以上の結果は、EBI3/p28(=IL-27)と異なり、EBI3/p19やEBI3/p35(=IL-35)は、サイトカインおよびそのレセプターサブユニットとして未同定の分子の関与が必要と考えられるが、その分子については不明のままである。そのような分子の1つとしてカルネキシンが考えられるが、未だポジティブな結果は得られていない。
3: やや遅れている
今年度の、目標であった組換え精製EBI3/p19はできたが、その機能を確認するまでには至らなかったので、その点、遅れている。来年度も、この課題に取り組み、活性のある組換え精製蛋白質の作製を目指す。
(1) EBI3/p19-Tgマウスを用いた生体内での役割とその作用機序我々は、既に肝臓特異的なプロモーターを用いて発現量の異なるEBI3/p19を発現する2系統のTgマウスを作製した。発現量は、肝臓の細胞溶解液の抗FLAG抗体を用いたウエスタンブロット解析より、10倍ぐらい発現量の違いがあることがわかった。そこで、まず、コンカナバリンA投与で誘導される自己免疫性肝炎モデルを用いて、血中のトランスアミナーゼ(GOTとGPT)活性測定と肝臓の組織学的解析により肝傷害の程度を比較し、このEBI3/p19の機能を明らかにする。次にその作用機序を調べるため、血中および肝臓の単核球細胞でのIL-22やIL-23、IL-17などのサイトカイン発現を、ELISAやリアルタイムRT-PCRなどで調べる。IL-22産生の増強が見られれば、抗IL-22抗体(米国Genentech社より入手済)投与により肝炎の抑制効果がキャンセルされないか調べる。抗体投与の効果がはっきりしない場合も考慮し、IL-22欠損マウス(Genentech社より入手済)とEBI3/p19-Tgマウスを交配させてIL-22欠損EBI3/p19-Tgマウスを作製し同様に検討する。(2) 機能的な組換え精製EBI3/p19蛋白質の作製平成28年度の検討より、HEK293T細胞を用いて組換え精製EBI3/p19蛋白質の作製はできたが、その想定されるレセプターを強制発現したBaF/3細胞の増殖を誘導できなかった。この難問の解決には、サイトカイン自身、またはそのレセプターに不足分子があると考えられるので、その同定を試みる。
ぴったりと金額を合わせるのが難しいため、少し残額が出た。
主に、消耗品代に使用する予定である。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
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