研究課題/領域番号 |
15K08434
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
杉原 仁 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (60183414)
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研究分担者 |
長尾 元嗣 日本医科大学, 医学部, 助教 (10468762)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 過食 / 肥満 / メタボリックシンドローム / 耐糖能異常 / モデルマウス / レプチン |
研究実績の概要 |
前年度の研究成果から、高脂肪飼料の投与によってメタボリックシンドローム様の諸症状を示すProne系マウスとそれらに抵抗性を示すResistant系マウスとの両系統間での表現型発現の差異は、主に体重差が顕在化する以前の若齢期における両系統間でのレプチン動態の違いを背景とした自発的な高脂肪飼料摂餌量の差によるものと考えられた。そこで本年度はまず、Prone系マウスの高脂肪飼料摂餌量をResistant系マウスの摂餌量に合わせたpair-feeding試験を行った。その結果、体重や脂肪組織重量に両系統間で差を認めない若齢期からのpair-feedingによって、Prone系マウスにおける体重増加、インスリン抵抗性の出現、耐糖能の増悪はほぼ完全に(Resistant系と同程度に)抑制されることが確認された。また本年度は、Prone/Resistant両系統マウス間でのレプチン動態(脂肪組織における遺伝子発現レベルや血中濃度)の差異を決定する可能性のある要因として、膵ランゲルハンス島(膵島)におけるグルコース応答性インスリン分泌能の両系統間での遺伝的な差異に注目し、この膵島機能の差異を規定しうる因子群(転写因子、糖代謝、脂質代謝、インスリン顆粒分泌機構など)の発現解析を行い、主に脂肪酸輸送や脂質代謝に関わる多数の因子の遺伝子発現レベルに両系統間で差があることを認めた。また若齢期におけるレプチン動態の差異が、両系統マウス間での摂餌量の差を実際に規定していることを確認するため、視床下部におけるレプチンシグナル応答の解析に着手し、実験系を確立しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の研究成果をもとに、Prone系マウスにおいて体重増加に起因するメタボリックシンドローム諸症状の発症の要因が、若齢期からの自発的な高脂肪食の過食にあることを確認することができた。またProne/Resistant両系統マウス間でインスリン分泌能に遺伝的な差異を認める膵島において、脂肪酸輸送、脂質代謝関連因子群の遺伝子発現レベルに差異があることを新たに見出した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに得られた成果をもとに、膵島(インスリン分泌)、白色脂肪組織(レプチン産生)、視床下部(摂食中枢)の関連性を中心に解析を進め、高脂肪食環境下において摂食行動異常(過食)を規定する因子の解明を目指す。さらに、それらをターゲットとした介入方法を検討し、メタボリックシンドロームの発症予防や動脈硬化巣形成の抑制に対する有効性を動物レベルで検証する。
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