研究課題/領域番号 |
15K08435
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
長尾 静子 藤田保健衛生大学, 疾患モデル教育研究施設, 教授 (20183527)
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研究分担者 |
吉原 大輔 藤田保健衛生大学, 疾患モデル教育研究センター, 助教 (70454402) [辞退]
釘田 雅則 藤田保健衛生大学, 疾患モデル教育研究施設, 講師 (50440681)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多発性嚢胞腎症 / メタボローム / 環境因子 / 塩分摂取 / オミックス解析 / りん酸化タンパク質 / 網羅的解析 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)の発症年齢や進行速度を左右する環境因子として、A) 積極的飲水、B) 塩分(Na)摂取、C) 蛋白質摂取がある。そこで、CKDの原疾患のひとつである多発性嚢胞腎症(PKD)のモデル動物において、幼弱期から環境因子を負荷し、環境因子が及ぼす影響をオミックス解析し、ヒトの先制医療に寄与することを目的とする。 昨年度は(1)メタボローム解析を生後20週齢のPCKラットと正常対照ラットの腎臓において行った。また(2)生後4週齢のPCKラットを積極的飲水(5%グルコース) 群、積極的飲水+塩分負荷(0.45%NaC溶液)群および対照群に分けて生後20週齢まで投与した。すると対照群および積極的飲水群に比して積極的飲水+塩分負荷群において収縮期血圧は高値を示したが、PKD進行の指標となる腎/体重比は悪化しなかった。 そこで、本年度は以下の2つの実験を行った。すなわち(A)りん酸化タンパク質の網羅的解析を生後20週齢のPCKラットと正常対照ラットの腎臓において行った。現在、詳細な解析を行っているところである。(B)生後4週齢のPCKラットを2群;1)塩分添加餌群、2)対照(通常餌)群、に分けて生後20週齢まで飼育した。すると、塩分添加餌群と対照群の摂餌量に差はみられず、塩分添加餌群では対照群に比して4倍の塩分を摂取した。塩分添加餌群は対照群に比して生涯飲水摂取量は1.2倍量であった。これは、積極的飲水(5%グルコース)群の生涯飲水量(約2倍)に比して明らかに少なかった。塩分添加餌群の収縮期血圧は対照群と比して高値を示した(塩分添加餌群:159㎜、対照群:150㎜)。しかしながら、PKD進行の指標となる腎/体重比に有意な差はみられなかった(塩分添加餌群:2.04%、対照群:1.83%)これらのことは、環境因子である塩分負荷による血圧の上昇がPKDの進行に影響を与えにくい可能性を示唆する。しかし、結論づける前に、さらなる検討が必要であると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多発性嚢胞腎症のモデル動物であるPCKラットと正常対照ラットのメタボローム解析に加え、りん酸化タンパク質の網羅的解析に着手できた。さらに、PCKラットにおいて、対照群および飲水摂取群に比して、約4.5倍のNa+イオンを摂取させたところ、研究計画当初の予想どおり収縮期血圧が上昇した。一方で、塩分負荷によるPKD病態の悪化より、積極的飲水によるPKD病態の軽減の方が勝るという大変興味深い結果を得ることができた。そこで、餌に通常餌の4倍量の塩分を負荷したところ、研究計画当初の予想どおり収縮期血圧が上昇した。一方で、塩分負荷によるPKD病態の有意な悪化は見られなかった。予想とは異なる結果となっているが、データは蓄積されており、概ね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
予想に反した結果が本当に正しい結論かを確認するために、別のモデル動物(pcyマウス等)に塩分負荷を行うなどの検討が必要である。さらに、食塩感受性の有無による環境因子の影響を確認するために、新たな疾患モデル動物(食塩感受性の有無)を入手した。 すでに得られているメタボローム解析とりん酸化タンパク質の網羅的解析を詳細に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験を行った結果、昨年度に引き続き当初の予想と異なる結果を得たため、新たな疾患モデル動物(食塩感受性の有無)を繁殖し、確認する必要が生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
新たな疾患モデル動物(食塩感受性の有無)を繁殖し、当初の予定通り、環境因子負荷を行う。
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