研究課題
ペルテス病(小児大腿骨頭壊死症)は大腿骨頭の変形・圧潰により歩行・起立困難となる難治性疾患(男児:1/740、女児:1/3500出生)である。ペルテス病の病態生理メカニズムは全く不明でこのため治療は遅れている。このことから、ペルテス病の病態メカニズム研究が急務であるにもかかわらず、我が国における当疾患の研究は皆無である。この問題を解決するため、申請者は2009年よりペルテス病研究に着手し、ヒト-動物-細胞の双方向的研究を行っている。これまでペルテス病の病態に関する分子学的解析の報告はないが、私たちの研究グループはブタ大腿骨壊死モデルにおいて関節液の貯留とインターロイキン6(IL6)濃度の上昇を確認した。また、私たちが開発したネズミ大腿骨壊死モデルにおいても同様にIL6濃度の上昇を確認した。さらに、ペルテス病患者から同意書を得たのち採取した股関節中関節液中においても同様にIL6濃度は健常群と比べ優位に増加していた。以上より、これらペルテス病動物モデル(ブタ、ネズミ)や患者検体(ヒト)において、一貫してIL6濃度の上昇を確認したことから、IL6の異常上昇がペルテス病の病態メカニズムに大きく関与していることを考えている。実際、IL6はその役割として、骨吸収を促進し、骨形成を抑制することが報告されており、この作用(骨吸収促進、骨形成抑制)はペルテス病の病態として観察される経過と全く一致している。IL6濃度の上昇が起きる原因、さらには、IL6作用(骨吸収促進、骨形成抑制)の詳細について、さらに詳細な研究を継続している。
2: おおむね順調に進展している
おおむね申請時の予想通り進んでいる。研究結果も仮説を逸脱していない。しかしながら、病態メカニズムの解明に関して今後時間がかかると思われる。
今後も「研究実施計画」に従い、ペルテス病の病態メカニズム研究を遂行する。共同研究者から供与される動物モデル検体(ブタ、ネズミ)ならびにヒト検体を用いて、IL6上昇を引き起こす原因を探る。炎症性サイトカインの上流としてDAMPsを検討、同定し、細胞研究においてIL6上昇の再現性を確認予定である。研究を遂行する上での課題として、特定分子同定のためABIタックマンアッセイシステムが必要で当初借用代を払う予定であったが、温暖化に伴い外部にサンプルを持ち出して測定することがデータの脆弱性をきたすことから、初年度に機器を購入した。現在、この課題は解消された。その他、研究計画・予算用途などの大きな変更はない見込みである。
次年度、次次年度の物価の上昇(消費税の増加などによる)を予想し経費の運用に余裕を持たせる必要がでてきた。このため、本研究に関する初年度の経費を大学から支給されている研究費を一部使用し、その代りに本科研費を繰り越す形として物価の上昇分に充てることとした。なお、大学からの研究費は次年度に繰越できない。
研究費の一部を大学からの費用で補ったためであり、この205,549円の繰越による研究計画の変更はない。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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