ペルテス病(小児大腿骨頭壊死症)は大腿骨頭の変形・圧潰により歩行・起立困難となる難治性疾患(男児:1/740、女児:1/3500出生)である。ペルテス病の病態生理メカニズムは全く不明でこのため治療は遅れている。このことから、ペルテス病の病態メカニズム研究が急務であるが、我が国における当疾患の研究は皆無である。これまでペルテス病の病態に関する分子学的解析の報告はないが、私たちの研究グループはブタ大腿骨壊死モデルにおいて関節液の貯留とインターロイキン6(IL6)濃度の上昇を確認した。また、私たちが開発したネズミ大腿骨壊死モデルにおいても同様にIL6濃度の上昇を確認した。さらに、ペルテス病患者から同意書を得たのち採取した股関節中関節液中においても同様にIL6濃度は健常群と比べ優位に増加していた。以上より、これらペルテス病動物モデル(ブタ、ネズミ)や患者検体(ヒト)において、一貫してIL6濃度の上昇を確認したことから、IL6の異常上昇がペルテス病の病態メカニズムに大きく関与していることを考えている。実際、IL6はその役割として、骨吸収を促進し、骨形成を抑制することが報告されており、この作用(骨吸収促進、骨形成抑制)はペルテス病の病態として観察される経過と全く一致している。IL6濃度の上昇が起きる原因、さらには、IL6作用(骨吸収促進、骨形成抑制)の詳細について、さらに詳細な研究を継続している。特に炎症性起因物質であるDAMPs(Damage-associated Molecular Patterns)がIL6上昇に寄与している可能性について検討を重ねてきた。その結果、DAMPsの一つであるHMGB1(High-mobility group box 1)が直接的にIL6の活性化をもたらす知見を得た。
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