研究課題/領域番号 |
15K08440
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
迫 康仁 旭川医科大学, 医学部, 教授 (40312459)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 多包虫 / カテプシン様システインプロテアーゼ / マトリックスメタロプロテアーゼ様プロテアーゼ |
研究実績の概要 |
条虫幼虫感染症であるエキノコックス症は、致死性かつ難治性の人獣共通寄生虫感染症である。エキノコックス症の特徴として、他の蠕虫感染で観察されるような宿主の好酸球の増多や強い炎症性反応が観察されないことが挙げられる。この抗炎症作用を発揮する候補分子として、エキノコックス幼虫の分泌産物に含まれるプロテアーゼが考えられているが、明確な解答は得られていない。本研究の目的は、1)申請者が世界に先駆けて見出したエキノコックスのプロテアーゼが、抗炎症作用などの免疫抑制活性を発揮し、宿主による病原体の排除を阻害するかを明らかにし、同時に、2)低分子化合物ライブラリーを利用した特異的阻害剤の選出を実施し、創薬のための基盤を構築することである。 平成28年度は、酵母Pichia pastorisを用いてエキノコックス幼虫カテプシン様システインプロテアーゼ(EmCLP1、EmCLP2、EmCBP1、EMCBP2)の活性型組換え体の大量発現を試みた。その結果、EmCBP1ならびにEmCBP2に関しては大量調整することは出来たが、EmCLP1ならびにEmCLP2に関しては、活性型の組換え酵素は得られるが大量調整までには至っていない。さらに、前年度に得られた新規カテプシンL様システインプロテアーゼ(EmCLP3)についてもP. pastorisを用いて活性型の組換え酵素を得ることが出来た。また、新規プロテアーゼのクローニングを試みた結果、マトリックスメタロプロテアーゼ様プロテアーゼのクローニングにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エキノコックス幼虫の持続感染、特に抗炎症活性に対するプロテアーゼの関与を解析するためには、プロテアーゼを大量調製する必要がある。しかしながら、エキノコックス幼虫よりそれを大量調製することは困難なため、組換え体の発現を試みた。酵素活性を持つ組換え体を発現させるには、ジスルフィド結合を介したタンパク質の正しい立体構造の構築が必要である。そのため、酵母の発現系を用いて酵素活性を有する組換え体の発現を試み、活性型組換え酵素を得ることが出来た。しかしながら、量的に不十分な組換え酵素(EmCLP1およびEmCLP2)があるため、大量発現のための条件を決定する必要がある。新規カテプシンL様システインプロテアーゼ(EmCLP3)については、活性型組換え酵素の発現に成功し、現在は大量調整を試みている。また、大腸菌発現EmCLP3に対するウサギ抗血清を用いたイムノブロット解析により、分子サイズ約26.8kDaの分子として包虫で発現していることが判明した。 さらに、新規プロテアーゼのクローニングを試みた結果、新規のマトリックスメタロプロテアーゼ様プロテアーゼのクローニングにも成功した。 活性型組換え酵素の調整に計画していた以上の時間を要してしまったため、抗炎症メカニズム解明に向けた解析が開始できずにいる。そのため、現在までの進捗は当初の予定よりやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
酵母発現系を用いて活性型プロテアーゼを発現させ、大量調製を実施する。その後、組換え酵素を用いて、インターロイキン1を代表とするサイトカイン分子、補体系分子などの液性分子に対する分解活性と免疫細胞に対する直接的な活性を調べる。 新規カテプシンL様システインプロテアーゼ(EmCLP3)の酵素学的性状解析、エキノコックス幼虫における局在などを解析する。さらに、新規のマトリックスメタロプロテアーゼ様プロテアーゼの活性型酵素の大量発現と酵素学的性状解析を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
エキノコックス幼虫組換え活性型プロテアーゼの免疫応答因子に対する分解活性を解析するために、インターロイキン1を代表とする炎症性サイトカイン分子、補体カスケード分子や免疫細胞を培養するための試薬を購入予定であった。しかし、組換え活性型プロテアーゼを十分量調製できなかったため、次年度にそれらを購入し、それらを用いた解析を次年度に実施することにした。
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次年度使用額の使用計画 |
インターロイキン1を代表とする炎症性サイトカイン分子、補体カスケード分子や免疫細胞を培養するための試薬を購入し、エキノコックス幼虫組換え活性型プロテアーゼのそれらに対する活性を解析する。
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