研究課題
マラリアは今もなお全世界で猛威を奮う感染症であり、その対策としてワクチン開発が急務であるが、防御免疫の理解が不十分なこともあり、ワクチン開発は困難を極めている。本研究ではマウスのマラリアモデルを用いて申請者らが見いだした「CD8T細胞の赤内型マラリアに対する防御」と「マラリア原虫の赤芽球感染」を連結すべく、感染赤芽球に対する防御メカニズムを明確にすることを目的とする。また、赤芽球感染のマラリア原虫にとっての生物学的意義も合わせて明らかとする。27年度の達成目標であった、1)CD8T細胞が感染赤芽球を認識すること、2)マラリア原虫が赤芽球内で次の感染を起こせる原虫へと発育することを明らかにすることができた。すなわち、モデル抗原である卵白アルブミンOVAを発現し、かつGFPも発現するOVA発現組換えマラリア原虫(Py-GFP-OVA)を作製し、マウスに感染させ、脾臓・骨髄から溶血した後GFP陽性感染赤芽球を精製する。OVAを認識するOT-I CD8T細胞と感染赤芽球と共培養すると、OT-IのIFN-γの分泌が認められ、CD8T細胞の抗原特異的感染赤芽球の認識が示された。また、感染赤芽球でのマラリア原虫の発育ステージを顕微鏡下で、あるいは感染赤芽球中の原虫の核含量をフローサイトメトリーで解析したところ、原虫の分裂・増殖が起こっていることが確認できた。さらに Py-GFP-OVAを感染させたマウスから、溶血後GFP発現を指標に精製した感染赤芽球をマウスに接種すると、感染が成立したことから感染赤芽球が感染源となることも明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
予定通りに実験を進めることができたが、研究協力者である今井孝助教が留学したため、研究の推進に若干の遅れが生じている。
当初の予定通り進めていく予定である。とくにH28年度は、生体内でのCD8T細胞による赤芽球に対する防御効果と防御メカニズムを詳細に解析する。具体的には、1)CD8T細胞を除去するとマラリアに対する抵抗性が弱くなることを観察しているが、感染赤芽球の増減に焦点を当てて解析する、2)OT-I CD8T細胞をマウスに移入したのち、Py-GFP-OVAを感染させ、感染後の原虫の増殖を親株の原虫と比較する、3)CD8T細胞の細胞傷害活性を担うパーフォリン/グランザイムBおよびFasLを欠損するマウスでの感染動態を、赤芽球を中心に観察する。いずれも、感染赤血球と感染赤芽球を感染源としてそれぞれの効果を比較することで、赤芽球に対する防御の相対的割合を明らかにできる。
予定していた研究をほぼ終えることができたこと、研究代表者が多忙であること、研究協力者が留学で研究室を離れたことを総合的に勘案し、それ以上の研究を見合わせ、来年度以降に実施するため。
当初の計画通りの研究を実施するために、実験動物等の購入に使用する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 図書 (1件)
Scientific Reports
巻: 5:15699 ページ: 1-12
10.1038/srep15699
Frontiers in Microbiology
巻: 6:600 ページ: 1-8
10.3389/fmicb.2015.006600