研究課題
本研究では、我々が見いだしてきた、「CD8T細胞の赤内型マラリアに対する防御効果」のメカニズムとして最も重要な、「マラリア原虫の赤芽球感染」の宿主マラリア原虫相互作用における生物学的意義を検討することを目的としている。本年度は、赤芽球でのCD8T細胞が認識する抗原エピトープの産生に着目して、CD8T細胞の防御的役割をさらに解析した。CD8T細胞は、細胞質にあるタンパク分解酵素複合体であるプロテアソームによって分解された8~10アミノ酸をエピトープとしてMHC クラスI分子とともに認識する。プロテアソームはタンパク分解を介して、増殖や分化の制御など平常時でも重要な生理機能を司っている。通常のプロテアソームのタンパク分解活性は3つのサブユニットβ1、β2、β5が担っているが、感染等の緊急時にはそれぞれがLMP2、MECL1、LMP7に置き換わることで、よりCD8T細胞を活性化するのに好都合な免疫プロテアソームへと変化する。免役プロテアソームサブユニットのうち、LMP2、LMP7欠損マウスを用いて、このマウスでの防御的CD8T細胞の誘導を検討した。通常マウスにマウスマラリア原虫の弱毒株を感染させると一過性の感染後、全て治癒する。弱毒株を治癒したマウス本来は致死感染を起こす強毒株を感染させても抵抗性となるように、弱毒株は強毒株に対して生ワクチン効果を持つ。弱毒生ワクチンに2度の強毒株ブーストを行うことで、防御的CD8T細胞が誘導される。LMP2あるいはLMP7を欠損するマウスでも弱毒株には抵抗性であったが、2度のブースト後に得られたCD8T細胞の防御能は野生型のCD8T細胞と比較して若干弱かった。これらの結果から、抗マラリア的CD8T細胞の誘導には免疫プロテアソームは必ずしも必要でないことが明らかとなった。
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Infection and Immunity
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